夢月亭~下手の横好き~

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小説:釣り一頁ss No.6 「運か、腕か――」  

小説釣り一頁ss No.6 『運か、腕か――』      夢月亭清修



 性(さが)、と言うモノを目の当たりにしたように思う。
 僕の恋人は釣り好き一家の次女に生まれ、幼い頃より釣りに親しみ、自然と触れ合って育ってきた。その為か斯々然々の経緯で必死に隠していた『釣り好き』も易々と露見し、僕がそれを受け入れたと見るや否や溌剌と野を歩く姿は……まぁ、何と言うか――
 彼女に対し、割と大人しい子という印象を持っていた僕からすれば「あの上品な猫はどこへ行ったか」という塩梅だ。
 当の彼女は「猫なんて最初から被っていなかった」と言い張るけれど、それが本当なら釣りに行けるか行けないかは彼女の人格に多大な影響を与えていると言わざるを得ない。
 性だな――と思ったし、性は捻じ曲げられないモノなのだろうとも。
 ミディアムヘビーロッドに一オンスのテキサスリグをぶら下げて、物干し竿のようなそれを両肩で曲げるその姿は、僕のような初心者から見れば堂々たるバスアングラーそのもので――あまりにも堂に入っていた。
 正直釣り場で肩を並べるのが畏れ多いと思ってしまうくらいだ。
 しかも本当に上手くて、小さな隙間を精巧に狙い撃ち、カバーの下から大きなバスを強引に引き抜くその腕前は、プロの取材を目撃しているような錯覚を覚える。
 その隣でちまちま小さなバスを釣る僕に対し、彼女は快活に笑って「今日も私の勝ちじゃない?」と檄を飛ばす。猫なんて可愛らしいものじゃなく、豹かトラか――そのくらい性格に筋肉が付いたようだった。
(この「筋肉」という表現はいつも僕の脳内にはあるけれど、言ったら激怒されること請け合いだろう……)
 でもしかし、彼女とのデートに釣りというプランが半分を占めるようになっても、これといって僕自身の心境、彼女に対する恋心に変化は無かった。
 こと釣りとなると元気になる彼女だけれど、それは躁鬱のように正と負を行き来するようなギャップではなくて、好きなことを満喫してはしゃぐ子供のような、正数に正数を掛けるような上がり方なのだ。だから好ましいギャップとして見ることができたし、口遊びに「あんまり羽目を外すと池に落ちるぞ」と苦笑いの親心を披露すれば、「そんなことよりどっちが大物を釣るか競争しよう」と返って来た時には笑ったものだ。
 まるで本当に子供みたいだね――と。
 そうやって僕も、気が付けば以前よりずっと釣りにのめり込んだように思う。

 さてさて、ノロケ話をこれ以上語っても仕方が無いので閑話休題だ。
 そんな僕達の釣りデートに初めて幼馴染のK介が同行したときの話を、少しだけしよう。

「なんだよてめぇ! 彼女ができたならそう言えよ! 俺はてっきり……」
 すごく怒られた。なぜ怒られるのか解らない僕は呆気に取られて彼の言葉のサンドバックに成り下がっていたけれど、そんな僕達の様子をM美は笑って眺めていた。どうやら、彼女にはK介の考えていることが直ぐに分かったらしい。
「――てっきり、釣りに飽きちゃったんじゃないかって心配になったのよ、彼。ふふっ、意外とツンデレな幼馴染じゃない」とは、あとで彼女が耳打ちしてくれた言葉だ。K介とツンデレの二つが僕の中ではまったく混じり合わないのだが、彼女は「ベジータ級よ」と笑った。
 そうして三人で釣りを始めたわけだけれど、釣り好き同士とあって気の合う遣り取りを見せていたK介とM美が、ある瞬間を境に言い合いになった。
 原因を聞けば、お互いの戦略が噛み合わず、どちらの釣り方がより正解かを競い合ってしまったらしい。
 M美が言うにはこうだ。
「すっかりターンオーバーしちゃってるじゃない。こういう時大きい魚はカバーからそうそう動くモノじゃないわ。ディープの隣接したカバーを探しましょう」
 対してK介はこう言った。
「いいや、流れ込みの新鮮な水でベイトを追ってる。大型はまだ水温に影響されていないはずだから、新鮮な水があればそこにいるはずだ」
 流れ込みがあるエリアとカバーの豊富なエリアは縦に長いフィールドの対岸同士(ちなみに、全体としてウィードは薄いマッディな野池だ)――要するに、どちらのエリアへ優先的に足を運ぶのかで意見が分かれたのである。
 僕は「両方回ればいいじゃないか」と思ったけれど、朝の良い時間帯をどちらで過ごすかは二人にとって重要な問題であるらしく、結果、二人はそれぞれが思うように釣りをして、どちらがより大きい魚を釣るか対決する運びとなった。
 二人は鼻息を荒くして互いに背を向け、それぞれが目指すポイントへと歩いて行く。僕はどちらに付いてゆくべきかと考えて、考えあぐねて――結局その場に取り残される形となってしまったのだった。

 いざ一人になってみると、どうやって釣ったモノか全然見当が付かない。僕の釣りがいかに二人の師匠任せだったか身に染みてくるようだ。
 取り敢えず「秋は巻物」との格言を信じてスピナーベイトをぐりぐり巻いてみたものの、アタリは一向に無く、釣れる気が全くしなくなってきた。
 ならばと手を変え品を変えの引き出しが僕には無いわけで、直ぐに思考はワームの釣りへと傾くのも、バス釣り初心者にとっては「あるある話」の一つだろうか?
 最近知ったスプリットショットリグを結び、漠然と沖へ投げ、ボトムを取り、ゆっくりロッドワークでズル引きしてみる。
 コツコツと石を乗り越える感触が手元に伝わって来る。何となく、何かしら沈みモノの感触を味わっていると釣れそうな気がするから不思議だ。
 僕はしばらく、のんびりとそれを繰り返した。すると、ある時不思議な感触を手に覚えた。それまで頻繁にあった小石の感触とは違い、もう少し強く引っかかって、ぐんと何かに乗り上げたような――。
「なんだろ? 何か大きいモノが沈んでいるのかな?」
 気になって同じ場所へ数回キャストすると、どうやらかなり大きめの岩が転がっているらしいと想像が膨らんだ――おぉ、ならばそこには魚が付いているかもしれない。ひょっとしたら、まだ誰も発見していない穴場的スポットじゃないかしら?
 なんて、そこまで考えて首を振った。
 もう何回も同じ場所にキャストしているのだもの。本当に穴場であるなら、既に魚の反応を得ているはず。実際にはもぬけの殻なのだろう――と自分にとって都合の良い想像を振り払った。が、次の瞬間――
 ぐっとティップが水面に向けて曲がった。こちらの動作とは関係なしに引っ張られたような――。
 まさかと思ってするフッキングは「吃驚アワセ」と言われるそれに違いなかったけれど、しかし一動作入れて確かめることのできた重さには、ちゃんと生き物の動きが感じ取れたのだ。
「うわわ! 魚だ! 間違いない!」
 今までに感じたことの無い強烈な重みに腕が振るえる。ジリジリと音を立ててラインを放出するドラグは果たしてキツイのか緩いのか――僕の左手は壊れて暴走する玩具のようにハンドルを巻き続けているのに、なかなか魚は寄ってこない。
「ど、どうするんだよ――これっ!」
 リールの回転に頭の回転は追いつかない。一人で慌てふためく僕の様は「テンパっている」という言葉がピタリと当てはまっていて――。
 しかしそうこうしていると右からM美が、左からK介が駆け寄ってきた。どうやら僕の遣り取りが遠くからでも見えていたらしく、それぞれ大物の予感に興奮しているようすだった。
「無理に巻いちゃ駄目! 魚の泳いでいく方向と逆に竿を倒しながらラインを出して! 適度に抵抗を掛け続ければ魚が疲れてくるくるはずよ!」
 M美が教師か教科書のような言葉で僕をサポートする。
「こっち寄せられるか? 俺がネットで拾ってやる!」
 K介はランディングネットを伸ばして積極的に魚を取り込もうと体を動かした。
 そうして――
 僕はネットの中で身悶える魚体に手を掛け、持ち上げる。
 つやつやの鱗、脂の乗った魚は魚をたらふく食べていると言うが、それを証明するような大きな腹はまるで力士のそれと似て強さの証にも見える。
 写真でしか見たことの無いようなカッコいいバスだった。何でも吸い込んでしまいそうな大きな口、日に焼けた黒い肌、ピンと尖った背鰭が凛々しくて、嗚呼、これがブラックバスなのだと思った。
「す、すごい…」
 大きすぎる喜びは逆にテンションを奪うのかもしれない。もっと楽しげにはしゃいでも良かったのだろうけど、僕の見開いた目は魚に釘付けで、瞬きするのも惜しいような――。
 そんな僕の様子にK介とM美はニヤケ面でハイタッチを交わしていた。一体いつの間に仲直りしたと言うのだろうか――二人の間には、共通の喜びが芽生えているらしかった。

 結局、この日釣れた魚はこの一匹だけ。喧嘩するほど自分の予想に自信を持っていた二人はなんとボウズである。僕からしてみれば意外過ぎる事実だが、「あんなところに良いストラクチャーがあるなんて分かるわけが無い」と、二人の言い訳が似たり寄ったりだったのが可笑しかった。
 そして今、唯一の釣果を収めた写真が僕のスマホには入っているのだけれど、これは結構、僕の中では宝物と言ってもいい一枚だったりする。
 通りかかった別の釣り人にお願いして撮ってもらったそれは、魚を掲げて気恥ずかしい笑顔の僕を中心に、その左右を満面の笑みと四つのピースサインが囲んでいる。
 これを見る度に僕の胸にはあの瞬間の喜びと、またこれを味わいたいと願う気持ちが膨れ上がるのだから――嗚呼、いいなぁ、釣りって――そんな気分に浸れるのだ。

「釣りは腕が無ければ楽しめない」と、僕は心のどこかで思っていたのだろう。でも、その考え方を壊すようなこの一匹が、過去となった今でも愛おしく思える。

                                          ――了
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しつこく書いてみて思います。

釣り」と「小説」は相性が悪いと……笑

そして文体が他のシリーズに引きずられ始めています… (つω-`*)

Posted on 2016/02/16 Tue. 02:49 [edit]

category: 小説:釣り一頁(つり1ページ)ss

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 釣り  ブラックバス  野池  小説 
tb: --   cm: 4

コメント

おはよう(*^o^*)ございます。

実際釣りやっていて、どの攻め方がいいかわからん時ってありますよねー。
単独釣行なら自分の直感を信じるしかないですが、複数なら僕の場合は手分けしてそれぞれ違うやり方で正解を探る様にしてます。
…期せずしてこの釣りキチ2人がそうした様に…(笑)
そしてアレですね、そこそこ経験のある釣り人があれこれ考えても釣れなくて、大して何も考えていない奴に釣れるってのも「釣りあるある」ですよね。
僕は単独釣行が多いですが、こうやって皆で釣りやるってのも良いかもと思います。まぁ夜釣りに付き合ってくれる人なんてそうそう居ませんが。

所で…僕の釣り(特にバス)は来月末から再開する予定にしています。
冬のあいだず~っと我慢してきましたがやっとあと1ヶ月で釣りが出来ると思うとワクワクですよ~。

URL | いぬふりゃ☆ #-
2016/02/16 09:39 | edit

M美ちゃん本領発揮ですね( ´∀`)bグッ!
やっぱり自分を隠して付き合うよりも素が出した方がいいと思います。はりきってるM美ちゃん可愛い♥
そして、K介くんとM美ちゃんも相性がいいみたいで良かったですw
仲良くなりすぎたりはしないかな; ちょっとそこら辺が心配ですが(^_^;)

みんなで力合わせて釣るの楽しそうでいいですね!
バスに限らず、私のためについでに鮎とかも釣ってきてほしい……鮎食べたい(´・ω・`)(おい
「気恥ずかしい笑顔の僕を中心に、その左右を満面の笑みと四つのピースサインが囲んでいる。」ってシーンが目に浮かぶようで笑いましたw

M美ちゃん可愛いし、K介くんのツンデレも微笑ましいし、主人公の優しさも素敵でほっこりしながら読ませてもらいました(^^)
あ、「秋は巻物」と「吃驚アワセ」ってどういう意味でしょう??
すいません、無知なもんでm(_ _)m

URL | たおる #-
2016/02/16 21:21 | edit

Re: タイトルなし

>いぬふりゃ☆さん
こんばんは!
自分はボートの釣りも多いし、なんだかんだお喋りしながらの釣りが好きなのでポイントを手分けすることは少ないです。
でも確かに、ルアーは別のモノをチョイスしますね~。
一匹釣れればすぐに真似します。笑

今回はなるべく「釣りあるある」を盛り込もうと思いました。
(そうしないとネタが………w)
実際に釣りやってるひとに共感してもらえれば大成功です(∩´∀`)∩

最近暖かい日もあるのでなんかそわそわしちゃいますねw
自分も早く魚がつりたいです♪

URL | 夢月亭清修 #-
2016/02/16 21:39 | edit

Re: タイトルなし

>たおるさん
こんばんは!
M美がノッてきました(*ノ´Д`)ノ
可愛いようで、やっている釣りはかなり男前な感じです。笑
K介とは気が合うのですが今回の通り、たぶん所々で喧嘩になる男友達のような関係だと思うので心配はいらなそうです♪

鮎………鮎は難しいので別の食べれる魚なら……Tがご所望とM美に依頼しておきます。笑
ひょっとしたら釣ってきてくれるかもしれませんね(∩゚∀゚)∩

ほんとこの小説はバス釣り知らない人には分からない用語が出てくるので申し訳ないです。
出来る限りコメントで答えるので遠慮なく質問していただければ幸いです。
「秋は巻物」↓
巻物はリールを巻き続けて泳がせる、主に魚を模したルアーのことです。
秋のバスは動き回ることが多くなるので「巻物」で釣るのが定石のように言われています。
「吃驚アワセ」↓
魚のアタリを感じた瞬間にアワセ(竿で引っ張る動作・竿を勢い良く立てて針を魚の口にしっかり掛ける動作)を入れることです。
おどろいて反射的にやってしまうのですが、本当は一拍待ってからアワセを入れたほうが確実に針が掛かります。

こんな感じで大丈夫でしょうか??
他にも気になるところがあれば遠慮なく聞いてくださいね♪

URL | 夢月亭清修 #-
2016/02/16 22:06 | edit

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