夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

小説:釣り一頁ssNo.3 「夏の休日」  

小説釣り一頁ss No.3     『夏の休日』    夢月亭清修


 ふと目が覚めたら、休日だった。
 ここのところ仕事に追われていた僕は、真昼間に目覚めたことに無用の罪悪感を抱きつつも、何の予定も見当たらない今日という日の過ごし方を考えてみる。
 思い付いたのは、一つだった。

 車で山間部にある野池にやってきた。
 初めて来る場所、初めて釣るフィールドだ。
 取り敢えず堰堤から池の様子を見てみたけれど――さて、どうすればここのブラックバスが釣れるのかなんて、ぱっと見て僕に分かるわけがない。
 こんな時、Kなら長々と持論、予想を繰り広げそうだなぁ…と思っただけ。
 僕のバス釣りは彼に教わって、彼と遊ぶ為の釣りなのだ。だからだろうか? 一人で来たって彼の顔が思い浮かんでしまうのは。
 そんな自分の癖がちょっぴり鬱陶しいが、しかし貴重な休日をこうして一人、またしても釣りに費やそうというのだ。僕も彼に感化されたものだと思う。
 取り敢えず、僕はスピニングロッドにトップウォータープラグを結んだ。「夏はトップだ」と、誰かが言っていた気がする――。

 燦々と夏の日差しが僕を責めていたのは最初だけ。あっと言う間に夕暮れ時だった。
 あれほど白く、完璧だった大きな入道雲が今は暖かなオレンジ色をしている。それを映す水面も同じ色で、視界に映る全ての境界線が曖昧になっていくようだ。
 僕がルアーを投げる度に、そこには波紋が広がるから――鏡面世界が揺れている。気持ちのいい風も、それを手伝った。
(嗚呼、なんか……悪くないな――)
 堰堤から竿を振り続けて、僕は思う。こんな時間があるのか――と。
 日々時間に追われて働いていることが嘘のようだった。僕の心は目の前に広がる空間へと拡散して、風のように自由だし、水面のように穏やかで――嗚呼、心地いい。
 だからそう、僕は思う。
(なんだ、人が幸せになるのって、こんなに簡単なことなのか)
 そんな気分だった。そんな気分を少しでも長く味わっていたいから、僕はその場所からルアーを投げ続けていた。
 釣れるとか釣れないとか、そんなことはどうでも良くなっていたのだ。
(今女の子に声を掛けられた、それがどんな子だって恋に落ちそうだ――)
 そう思う僕は気持ち悪い程にロマンチストだろうか? うん、そうに違いない――自らの悪癖を断じて、僕はへらへらと夕焼けに笑う。そんな時に――
 ぐっ――と竿に重さを感じた。慌てて巻き上げると、簡単に寄って来るが確かに魚が掛かっているらしい。
(うわっ! つ、釣れちゃった!)
 まさか釣れると思っていなかった僕はみっともなく慌ててしまった――でも、そうして僕の手に落ちた魚は、慌てる程には大きくなかった。
 二十五センチ程のブラックバス
 何と言うか、魚を持った時の僕は不思議な気分だった。
 釣れたのは勿論嬉しいけれど、折角トップウォーターで釣れたのに、こいつが水面を割る様を見逃したのが残念でならないし、良い気分をちょっと邪魔されたようにも感じたのだ。
(嬉しいような…でも、ちょっと違うような…)
 釣りをしておいて何を贅沢な、目当ての魚が釣れたのだから、それでいいじゃないか――誰かはそう言うだろうか? でも――
 一つ、思い出したことがある。Kが以前に言っていたことだ。
「釣った、と釣れた、は全然違う」
 なるほど、ならこれは「釣れた」魚なのだろう――どうしてこの魚が釣れたのか、僕には全然分からないのだから。
「釣ったって感覚が解ったら、きっと、楽しいだろうなぁ…」
 僕は自然と呟いていた。

 さて、その魚を池に逃がそうという折に、堰堤の上から声が掛かった。
「あ、釣れたんですか?」
 女の子の声だった。
 振り返ると、逆光の中に佇む女の子がいる。顔は良く見えなかった。でも――
 嗚呼、気持ち悪い程にロマンチストたる僕のこと、大いにドキドキしてしまったことは言うまでもない。
 この時の僕は「釣った」のだろうか、「釣れた」のだろうか――いいや、「釣られた」のかも。

                                      ――了

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実験的に書き始めた掌編釣り小説ですが、なんだか同じキャラクターがホイホイ出てくるので連載風に纏めることにしました。

題しまして「釣り一頁(つりいちぺーじ)ss」でございます。

どこまで続くか分かりませんが(と言うかこれで終わりの可能性もありますが…)、思いついたら更新してみようと思っています。

ともあれ、作中が夏とあってハイシーズンが恋しくなってきました。笑

Posted on 2015/12/04 Fri. 04:12 [edit]

category: 小説:釣り一頁(つり1ページ)ss

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 小説  掌編  ブラックバス  釣り 
tb: --   cm: 4

コメント

おはようございます。

むむむ…今の時期に夏の釣りの話を読まされると尻の穴がムズムズしてくるじゃないですか(笑)
夏の描写ですが、更にヒグラシの声とかプラスされてたら良かったのにな~とか思ってしまいました。
自分の夏の夕方~の釣りには欠かせない要素なので…。個人的過ぎる意見でアレなんですが(笑)
釣った、と釣れた、ですかぁ。
釣った、だとしてやったり感がかなりありますが、魚が掛かった時のドキドキ感は釣れた、の時の方がある様な気がしますね~。

URL | いぬふりゃ☆ #-
2015/12/04 06:22 | edit

Re: タイトルなし

>いぬふりゃ☆さん
こんばんは!
ほんと、むずむずしちゃいますよね。笑
自分もそうですw
なるほど、ヒグラシですか~。確かに音の要素を加えるのは大いにアリですね!
じぶんも蝉の声やヒグラシの音に包まれて釣りした経験があるので分かります。書けばよかった!
即興短文みたいな感覚で書いているので敢えて修正はしませんが、音、覚えておきます\(´ω`)/
自分は「釣った」魚が欲しくてバス釣りをやっている感じがしますね~。
「釣れた」を求めて釣りすること、最近無い気がします。

URL | 夢月亭清修 #-
2015/12/04 22:55 | edit

ちょっとドタバタしていてご無沙汰してました(>_<)

おお、「釣った」と「釣れた」では違うのですね。
釣った方が達成感があるような……。違うのかな??
釣れたは偶然やったぜひゃっほう!みたいな(笑)

そして最後になにやら素敵な出会いが(*´ェ`*)

こういうお話は釣りをしている夢月亭さんならではの臨場感が感じられていいですね。自然を感じながら釣りしてみたくなってきました♪
また遊びにきますヽ(=´▽`=)ノ

URL | たおる #-
2015/12/05 12:15 | edit

Re: タイトルなし

>たおるさん
お久しぶりです♪
まったくもってそのイメージですよヽ(゚ω゚)ノ
僕は釣った方が達成感感じますね~。
でも、釣れたでも嬉しいです。ひゃっほう!ってなります。笑

最後の出会い、次に繋ぐべきか否かちょっと考えています。
なにせ実際の釣り場には男性との出会いしか転がっていませんから……w

ありがとうございます!
釣りに限らず、やっぱ自然はいいですよね。
釣りの楽しさ+自然の良さ、解放感なんかが描けたらいいなぁと思っています。
是非また遊びに来てください♪

URL | 夢月亭清修 #-
2015/12/05 22:38 | edit

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