夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

小説:釣り一頁ss No.1「魚の気持ち」  

小説釣り一頁ss No.1   『魚の気持ち』  夢月亭清修

「あのさ、たぶんここのバスは最初の駆け上がりに隠れてて、普段から浅場にいる小魚が降りてくるのを待ち伏せしてるわけよ。自分で追い込まなくってもいい、鳥がやってくれば小魚が勝手に慌てて降りてくるんだから」
 Kは右手に立派なブラックバスを持ってそう語った。一匹釣るごとに解説を入れるのは彼の悪い癖である。
「だから対岸の浅場にルアーを投げて小魚を散らしてやるんだ。そうするとバスのスイッチが入る。入ったところにルアーが勢い良く通れば簡単に食ってくるわけだ」
「へぇ、なるほどね」
 僕は適当な相槌を打って話を聞く。
 正直に言うと、彼の解説はウザったいが、しかし初心者の僕に少しでもバス釣りを知ってもらおうとの心遣いなのかも知れないソレを、無碍にする気も無いのがこの僕だ。でも――
「まぁ要するに、魚の気持ちを考えろってことだよ」
 彼はお決まりのセリフを口にして、長い長い解説を終えた。僕は心の中で、今回も本当に長かったな………と溜息を吐く。
 そう、本当に長いのだ。季節的な話から始まって、フィールドのパターンを語り、ではなぜそのルアーをチョイスしたのか、果てはタックルバランスまで。一匹一匹、丁寧に語り過ぎる。
 僕はその時間釣りを中断して耳を傾けていなければならない。溜息だって吐きたくもなる。
「あのさ……」
 流石に堪忍袋の緒も切れた――というわけではないけれど、僕は彼に問う。
「Kってさ、人の気持ち考えたことある?」
 きょとんとしたKの顔が、ちょっぴり可笑しかった。
「う~ん……」
 腕を組んで、一体何を思い出そうと言うのだろう。無いに決まっている。案の定――
「無いね、さっぱり無いね」と、彼は言い切った。清々しいくらいに言い切ったのだ。
 そこまで言い切るか――と僕は笑った。
「じゃあさ、なんで魚の気持ちは一生懸命考えるわけ?」
「そりゃお前、釣りたいからに決まってるじゃん」
「それはそうだろうけど……僕は、その労力を少しだけでも人間相手に回したら良いと思うよ」
 普段言いたかったことが言えて、僕の心は少しだけ軽くなった。でも――
「はぁ?」
 Kは思い切り顔を顰めてそう口にしたのだ。いかなKと言えど「そうかもね」くらいの反応を予想していた僕は、さすがに面食らった。はぁ? って――在り得ないだろ、その反応は。
 しかしだ、続いた彼の言葉に僕は納得してしまった。だってそれは、紛れも無い事実だったから。
「俺、お前の気持ちなんて考えたことも無いけれど、でもお前と俺、もう付き合い何年目だよ。幼稚園からだから二十二年くらいか? 考えなくても続く奴とは続くもんだ。人間はそれで十分だよ。俺、ストレスでハゲたくねぇしな」
 そう言って、僕の幼馴染は気持ちよさそうにルアーを投げる。今はもう、魚の気持ちしか考えていないのだろう。
 僕もなんとか一匹釣りたいから、彼を真似て、彼と同じルアーを投げてみた。
 池の対岸付近で、二つの波紋が混じり合っている。

                                                         ――了

次話→小説:釣り一頁ss No.2



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釣り小説のブログなのに、その二つはなかなかうまいこと混じり合わないモノです。

実験的に書いてみたものの、結局は登場人物を描くしかないなぁ……と思いました。

Posted on 2015/11/21 Sat. 00:44 [edit]

category: 小説:釣り一頁(つり1ページ)ss

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 小説  ブラックバス  釣り 
tb: --   cm: 2

コメント

おこんばん(/・ω・)/にゃー!

むむ?実験的に(?)釣りネタですか。
読んでてとある知人を思い出しました。釣りはまぁまぁ上手なんですがやたら講釈垂れるちょいウザい奴を…(汗)
まぁもう切ってしまったので会うことも無いんですが…。
人の話きかないで延々と自論ばかりくっちゃべって止まらないヤツは自分も苦手です。

ところでこの続きは無いのでしょうか??実験だから無しかな~。

URL | いぬふりゃ☆ #-
2015/11/21 01:20 | edit

Re: タイトルなし

>いぬふりゃ☆さん
こんばんは!
釣りのカタール人はまぁあるある話ですよね。笑
何も考えずに書き始めたらカタール人が登場しちゃいました。w

続きは今のところ考えてませんが、また別の登場人物で釣りネタは書くかもしれません。
なので「気まぐれショート・ショート」、今後ともよろしくお願いします♪

URL | 柏清修 #-
2015/11/21 01:49 | edit

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