夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

小説:不思議なオカルト研究部 第ニ話 腕が揺り起こす 外伝  

幻創文庫にて更新中の「不思議なオカルト研究部シリーズ」第ニ話の外伝掌編)です。

本編ネタバレを含みます。本編を読んでいない方は是非こちらに→「第ニ話 腕が揺り起こす 前編」

本編後編はこちら→「第ニ話 腕が揺り起こす 後編」

よろしくお願いします。

☆―――――――――――――――――――――――――――☆

 『腕が揺り起こす 外伝

 カフェ、ハンドメイドのマスター中川譲二はこだわりのある男だ。手製にこだわって店を構え、豆にこだわって世界を放浪し、ドリップにこだわって一杯の珈琲を入れる。仕事中の身だしなみも勿論、彼自身にとっては洗練されたカフェのマスターとはこうあるべきとの一念にこだわって完成していた。
 髪は艶のあるジェルでぴっちりと七三に分け、口髭には毎朝鋏を入れる。極めつけは黒縁の伊達メガネとスタンドカラ―シャツ、そして黒のベストだ。
 その容貌が客たちの間では「ちょっと若い旧五千円札」と言われていることを彼は知らない。まぁ、知る必要も無い。
 そんな彼が唯一こだわらないモノと言えばお店に来る客がそうだろう。客は選ばない。
 しかしだ、学生と言う客はどうにも物足りないと感じていた。大学が近い為平日は学生で込み合うこの店だが、彼等大学生と言うのは味の違いを分かっているのかどうか――いつもお喋りばかりに夢中になって、この店の珈琲がどれ程のものかと値踏みしようともしない。利用してくれるのは有難いが、もっと珈琲と向き合ってもらいたいものだと彼は感じていたのだ。

 ドアベルが鳴った――カウンター席の隅でこだわりのパイプを吹かしていた譲二は「いらっしゃい」と声を掛け立ち上がる。
 客は女子大生、派手な金髪に赤いカチューシャ、服装も今時でいかにも小うるさそうな娘に見える。が、彼は嬉しくなった。よく来るこの娘だけは、自分の珈琲と真剣に向き合ってくれる学生と知っていたから。
 名前も知っている。よく一緒に来るアホっぽいボブカットの娘が呼んでいた。ミドリ先輩――と。
 今日はそのミドリが男を連れて来ていた。これと言って特徴の無い、なんとも言えないような男だ。きょろきょろと落ち着きなく店内を見回して、同じ木目がただ連なるような景色に目を回していた。
 ふん、この統一された空間のこだわりも解らない若造か――と譲二は鼻で息をする。息だけして、黙って二杯分の豆を挽いた。

 今日は暇な日だった。店内にはミドリと若造しかおらず、その二人に珈琲を出してからは追加注文も無い。譲二は退屈してまたパイプを吹かす。吹かしながら、何とはなしに二人の会話に耳を傾けていた。
 会話とは言っても、ミドリが一方的に怪談を語っている。
 これは今日知ったことだが、なんとミドリは「オカルト研究部」なる怪しげなサークルに所属しているらしい。譲二には意外な事実であった。若造は、どうやらそのサークルの仮入部員で、話は、彼をその気にさせる為のモノであるらしい。彼は真剣にミドリの話に耳を傾けている様子だった。
 その怪談話も終わり、若造が伝票を持ってレジにやってくる。ミドリはそれがさも当たり前のように外へ出て行った。
 譲二は若造から千円を受け取ると、意味深に彼へと語りかける。
「君、親の愛情ってのは深いな。なにせ生霊になるくらいだ――でも、全ての親が我が子に生霊を飛ばすわけじゃない。じゃあなぜ、話の中の女の子の前には現れたんだ? 始めたばかりの一人暮らし、珍しい話でもないじゃないか」
 突然話の続きでも降ってきたように、若造、山田直也はポカンとした顔をした。いきなり話し掛けられたのだ。譲二には予想通りの反応である。
「君、僕にはさっきの話、生霊を呼んだのは娘の方に思えたよ。一人暮らしが寂しかったんじゃないだろうか。でも、『寂しい』と親に電話を掛ければきっと余計に心配される。おいそれと掛けるわけにもいかなかったんだろう」
 直也はその言葉に腕を組み、何かを考えるような目付きになった。その表情に、譲二は心の中でガッツポーズをする。
「じゃあね、君、またおいで」
 その喜びを顔に表すことは無い。譲二は直也が何か言う前に素早く別れの線引きをし、またカウンター席でパイプを吹かし始めた。
 背中の方で、直也が店を出たであろうドアベルが鳴る。
 店内が自分一人であることを確認し、譲二は呟いた。
「うむ、今日もこだわりのある仕事をした」
 客の話を聞いてしまった時は何かしら意味深なコメントを残す。洗練されたカフェのマスターとはこうあるべきとの彼のこだわり、これもその一端であった。

                                                  ―――了

☆―――――――――――――――――――――――――――☆

幻創文庫では平日毎日専属作家の作品を更新しています。

カテゴリーも一般文芸・ラノベ・ロマンス・官能・BLと揃っております。

あなたのお気に入り作家が見つかるかも!?

是非遊びに来てください♪→幻創文庫


にほんブログ村

Posted on 2015/10/01 Thu. 23:10 [edit]

category: 小説:不思議なオカルト研究部

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 外伝  掌編  小説 
tb: --   cm: 2

コメント

本編第2話まで読み終わりました^^
直也くん、じわじわとオカルト部に興味を持って行ってるみたいですね。
ただの都市伝説と、霊障の境目を探る感じの立ち位置なんでしょうか、オカルト部。
部員たちが個性的で楽しいすね^^
このあと直也くんは何を目にするのか!
続きもゆっくり、読ませてもらいます♪

URL | lime #GCA3nAmE
2017/03/15 09:28 | edit

Re: タイトルなし

>limeさん
こんばんは!
おお、オカルト研読んで下さったんですね!ありがとうございます^^
徐々に具体的な霊障に出くわしたりもする予定ですが、最初は確かに、そんな立ち位置からスタートしてますね。

お時間よろしい時にまた是非♪

URL | 夢月亭清修 #-
2017/03/16 02:57 | edit

コメントの投稿

Secret

FC2カウンター

プロフィール

カテゴリ

Twitter

最新記事

月別アーカイブ

最新コメント

ブログ村ランキング(小説)

メールフォーム

検索フォーム

RSSリンクの表示

リンク

ブロとも申請フォーム

QRコード