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夢月亭~下手の横好き~

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『35.世界の変遷VR3』  

     35.世界の変遷VR3――

 ヌンの内側で、ヌンの指示通りに動いていたのは人ではない。やはり、自動兵士同様の黒いコードの束――ロボットだった。彼等を構成するコードは彼等の神経となり、時に筋肉となり、あらゆる技能を発揮することができた。ゆえに自動兵士として活動する個体もあれば、見栄えは同じでも、施設に閉じこもって遺伝子操作を施した人間の製造に従事している個体もいたのだ。
 今、僕には当時のヌンの内側が見えている。薄暗い空間にいくつもの大型カプセルが緑色の液体を湛え、ぼんやりと光を放ち、その内側で裸の人間を促成栽培しているようだ。
 多くは胎児の形をしているが、中には成人の男女の姿も見える。
 これがヌンの語る新人類――そしておそらくは、この世界で僕達三人が目にしてきた、赤レンガの都市に住まう、そしてヌンに住まう人々の遠い祖先なのだろう。
 カプセルは僕達も一度入った、あの治癒装置とどこか似通っていた。
 そしてカプセルの隙間を縫うようにして、件のロボット達は休むことなく働いている。その光景に、僕は言いようの無い空恐ろしさを感じていた。そして――

――準備は滞りなく、やがて、前世代の人類は滅びた。私が、洗い流したのだ。そして、千年の復興計画が始まった――

 ヌンは大陸の環境をできる限り守りながらも、三国の掃討に成功してしまった。砂漠はまたその存在を肥大化させはしたが、そこは千年の時を経て直せばよいと、そう考えていたのだろう。

 そうして、ヌンは動き始めた。百足のような細かな足を生やしたり、巨大なキャタピラを駆使したり、様々な足を使って旅を開始した。

 まず手始めに、ヌンは人の暮らせる限られた土地に再びロボットを放ち、今度は彼等に、戦争ではなく復興の為の任務を与えた。

――まずは新人類の、第一世代を住まわせる環境作りをした。第一世代は私にとって半人類と言える。お前たちの仲間であるニナ・キューブリックと同じように、脳内にプログラムを持つことができ、そこには私の意志を宿していた。ゆえに半人類。彼等は疑問を持つことなく、整えられ、与えられた環境に住みついた。そして次の世代を育て、教育し、第二世代に信仰と規律の下地を与えたのだ――

 ヌンはニナの名を引合いに出し、そう語った。どうやら彼女がヌンにアクセスした際、ほんの短時間の逆探知で、僕達三人の情報は洩れてしまっていたようだった。

――そしてこの第二世代からが私にとっては人類である。私の意志を埋め込むことなく、しかし信仰によって私と繋がる、私の望んだ人類の始まりだった――

 ヌンは貿易を開始し、それと同時に、信仰をより強固なものにするべく使者を遣わした。同時に法律を整え、当に今、この世界を構成している要素の、その原型を形作っていったのだった。

――長い旅の始まりだった。私はこれらの活動と並行して、砂漠を蘇らせる計画を進めていった。そしてそう、青木祐介よ――お前の考察は大したものだ。私は貿易を独占する意味でも、砂漠を蘇らせる意味でも、件のキメラを用いたのだ。キメラは深い地中から土を持ち上げ、砂と混ぜ、そこで己の屍を有機物の基礎とするのが役割だ。彼等には有機物を集めようとする本能があるゆえ、人を襲ったりもする。寿命は短いゆえに、私は今でも大量の彼等をストックし続けていた。君達が目撃したのはそれだ――

 僕達の地下探索は、どうやらニナが逆探知を受けた瞬間から、ヌンには筒抜けだったらしい。ならばどうして僕達を排除しなかったのだろう? ヌンならばそんなことは容易いはずだ。何をするか分からない異世界人など、計画の敵と見なされてもおかしくはないだろうに――。
 そんな僕の思考を、やはりヌンは拾い上げて語った。

――ニナ・キューブリックはその時まだミクラと出会っていなかった。が、君達二人の説明を受け、予備知識としてその名が彼女の中にもあった。君達が排除されれば、ミクラが悲しむことは理解していたのだ。私の計画の大詰めが、随分とミクラの心を苦しめていて、君達はそんなあの子の支えになろうとしていた。ゆえに見守ることを選んだのだ。嗚呼、そしてその選択は、どうあがいても私があの子を殺せないのだと、私に悟らせた――

 心なしか、ヌンの声に翳りを感じた。

――私はただ、己が役割をより有意義なものにする為だけに世界を形作ってきた。命を生み出し、教育し、貿易を司り、宗教を作り、キメラを放ち、神のふりをし続けてきた。今だからこそ、その結果は上々と言える。人々は清く正しく、怨みを抱えずに生きている。そしてこれからは、大自然の恩恵を受け、行き過ぎた科学の無い、より安らかな生活を手に入れるだろう。しかしだ、ここまで順調に推し進めてきた計画に、一つだけ、大きな誤算があった――

 嗚呼、きっとミクラさんのことだろう――僕がそう思うと、宙に浮くようだった視界と体感が地に戻され、映像が霞んでいく。恐らく、世界の変遷は今に至ったのだ。
 そうして消えてゆく映像の向こう側に広がったのは、始めと同じ真っ白で広大な空間だ。そこには僕と秀喜、そして、もう一人がいた――。

                  ≪――続く≫
前話→34.世界の変遷VR2    次話→36.心模様の断片


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Posted on 2018/05/16 Wed. 21:54 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

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