夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

小説:不思議なオカルト研究部 第一話 蕎麦屋の石臼 外伝  

「君、一回生っすよね? で、友達のいない人」
 中庭のベンチで缶珈琲を飲んでいた山田直也を指差してそう言ったのは、茶色いふんわりしたボブカットの女子――化粧っ気が無く、見るからに活発そうな雰囲気だった。その顔は花も咲いたかの満面の笑みで、自分が相当失礼な物言いをしていることにも気が付いていないらしい。
 直也はそんな彼女に対して怒るでもなく「えぇ、まぁ」と気の抜けた返事を返した。実はこの時、彼の心の中に在ったのはむしろ喜びで、言葉にすれば「ようやくこの時が来たか!」という塩梅だろう。
 直也は大学に入学し、一人暮らしを始めて以来友達がいなかった。特定の趣味も無く、手頃なサークルさえ見つけられなかったのである。だからこうして、待っていた。
 誰を?
 誰かを、である。
 一回生は土曜日の午前中にも必修科目があり、それを終えれば午後は暇――彼はその暇を、毎週中庭のベンチで缶珈琲を飲むことに費やしていた。「誰か話し掛けてくれないだろうか?」と思いながらである。
 なんとまぁ、これが彼の編み出した友達作りの方法だったのだ。情けない程消極的な友達作り――しかし、今、それは実ってしまった。しかも、話し掛けてきたのは彼から見て好みの女の子。本当ははしゃぎ出したい程に彼の心は浮れていたが、それを覚られてはならないと自らに言い聞かせ、敢えて気の抜けた返事だってしたのである。そうでなかったら、きっと引かれてしまう。「いやっほぉぅぅぅ! 貴女みたいな人に話し掛けられるのを待ってました!」なんて口が裂けても言えなかった。
 だからそう、続く言葉だって冷静を装い、当たり前の会話を心掛けた。
「あの、どちら様ですか?」
「私は石動美也、二回生っす」
「よく分かりましたね、俺に友達がいないって」
「へっへっへ」
 石動と名乗った女子は得意げに笑い、言った。
「土曜日、お昼頃に、このベンチでぼんやりしている学生は友達のいない一回生って相場は決まってるんす。片手に缶珈琲なら、もう間違いないんすよ」
「缶珈琲……もうピンポイントで俺じゃないですか……なんです? それは。ジンクスって言うんですかね」
「いえいえ、七不思議って言うんす」
「七不思議?」
「ええ、実はそう言うのがウチのサークルの専門でして――あ、信じてないでしょ?」
「まぁ、そうですね。土曜、お昼頃、ここまでくれば大方一年生ですし、必修科目の後で一人でいるのは、まぁコレも友達がいない要件に当てはまるのかな、と」
「…えぇっと――なんだったかなぁ……」
 そこで石動は何かを思い出そうとするように唸り始めた。続く言葉は受け売りをなぞるようで、どうにも抑揚が無い。
「逆、なんすよ……確か、友達のいない一年生が座っているのが七不思議、なんじゃなくて、それ以外の人が座らない、だったかなぁ?」
「――えっ、つまり土曜のお昼頃、友達のいない人間が座る以外、誰もここには座らないってことですか?」
「そう! それそれ! そっちの方が七不思議にカウントされているんすよ!」
 そんなことがあるだろうか? と信じがたい気持ちで直也は立ち上がり、辺りを見渡して言った。
「で、でも、ここって中庭の良く見渡せる日当たりの良い場所だし……そんな……」
「でしょ? とっても不思議っすよね!」
 石動は伝えたい内容が上手く伝わったことに満足したのか、またその顔をぱっと輝かせた。そして、直也の右手を両手で握りしめる。
「あはっ、君、きっとウチのサークルに向いてるっす! 是非今から仮入部するっすよ!」
 そうして駆け出した彼女に、直也は手を引かれてなすがまま――好みの女子に手を握られたことがそんなに嬉しかったのだろうか? 彼が事の実態に気が付いたのは、サークルの部室が犇めきあうクラブハウスなる建物の前に到着してからだった。
「あ、これって勧誘か……」

                                                                      ―――了
☆―――――――――――――――――――――――――――――――☆

本編はこちら→幻創文庫
不思議なオカルト研究部シリーズ、カテゴリーは「一般文芸>ノンジャンル」よりどうぞ!

本編前編へ直接GO→第一話 蕎麦屋の石臼 前編

本編後編へ直接GO→第一話 蕎麦屋の石臼 後編

本編のモデルになった蕎麦屋の記事、ございます→夢月亭~下手の横好き8月25日


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Posted on 2015/08/26 Wed. 23:29 [edit]

category: 小説:不思議なオカルト研究部

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 小説  掌編 
tb: --   cm: 2

コメント

|ω・*)ノコソ~リ…

深夜にお邪魔します…

主役(?)の男の子の名前見て吹きました(´゚艸゚)∴ブッ
僕の名前とよく似てる+漢字4文字中2文字が同じとか(笑)

僕は友達いない事はないですが、敢えて1人でいる事が多いんで主人公君とちょっと違いますが…。

URL | いぬふりゃ☆ #-
2015/08/27 01:33 | edit

>いぬふりゃ☆さん
読んでもらえたようで嬉しいです。ありがとうございます(。◠‿◠。)
感じ四文字中二文字ww
それは吃驚しますね!w

山田直也は敢えて一人でいることもできなかったのでしょう。
是非本編もお暇があればよろしくお願いします♪

URL | 夢月亭清修 #-
2015/08/28 00:34 | edit

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