夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

≪企画小説≫ナイスパレード『浮かれ少年』  

≪企画小説≫like a Sound Novel♪の投稿作品です。

当企画は『楽曲(インスト)』と『楽曲のタイトル』を御題に作品を作る企画でございます。
(詳しい企画概要はこちら→≪企画小説≫like a Sound Novel♪Vol.2(企画概要)

まずは先陣を切ってオーガナイザーのセルフ投稿。笑

今回の御題はこちら↓


Nabowa/ナイスパレード

こちらのハッピーな曲を御題に掌編小説を書いてみましたので、是非音楽と一緒に楽しんでいただけたら幸いです^^

☆―――――↓作品はこちら↓―――――☆

     ナイスパレード 『浮かれ少年』      夢月亭清修

 桜の開花予測も第一回が過ぎた頃合いの、三月は早春なれば東北地方の風は未だ冷たく、学生はマフラーが依然として手放せぬ。
 そのマフラーを凧か鯉幟の如くとはためかせ、学校からの帰り道を駆けるは十五歳の学ラン少年だ――彼、その顔に抑えきれぬ感動の笑み貼り付かせ、嗚呼、駆けるのではなくスキップでもしたならどんなに楽しげか。
 いいや、通りすがりの人々に奇異な目で見られること請け合いであろうことは言わずもがな。けれども――
 少年の胸に溢れる喜びの、何と形容しがたきことか。まだまだ枝しか見えぬ桜の木に、その喜びが花咲か爺となって彼の眼には満開と映るよう。
 本当なら叫んでしまいたい――でも、帰路を囲む住宅の連なりが彼にそれをさせない。ならばとその衝動が自然、ただただ足を速めるに至った。
 そうだ、そんな衝動的な感動を彼は覚えている。駆け出さずにはいられなかったのだ。

 ほんの数分前のことである。
 中学校も間も無く卒業という今、高校も無事に合格したけれど、彼にはやり残している重要な案件があった。それは――
 告白――そう、大好きなあの娘へ、三年間片思いし続けたあの娘へ、すらりとした足の美しいあの娘へ、体育祭のリレーで転んでいたあの娘へ、スクール水着が眩しすぎて直視できなかったあの娘へ、合唱コンクールの優勝に涙していたあの娘へ、八重歯の可愛いあの娘へ、別の高校に進学を決めたあの娘への、告白。
 今日は卒業式前の最終登校日で、本当に最後のチャンスだった。卒業式の後はそれぞれ部活の仲間との予定もあろうし、二人きりになるチャンスはまず在り得ない。故に少年は今日に賭け、とても長い時間寒空の下校門で待ち伏せた。
(頼むから一人で出てきておくれ――)
 何度もそう願いながら。
 その願いが天に通じたか、一人で出てきた彼女を前にした時、少年はまだ短い生涯の中でも最大の緊張と心臓の鼓動を覚えたものだ。
 痛いくらいに心臓が跳ねる、口の中が無性に乾く――ちょっぴり、泣きそうにもなった。断られた時には本当に泣いてしまいそうな気がした。
 それでもどうにか、不信心者も神に祈るような気持ちで懸命に彼は伝えたのだ。真っ直ぐに、一生懸命に――
「ずっと好きでした! 俺と付き合ってくだしゃい!」
 噛んだ――下げた頭の下に真っ赤な茹蛸が出来上がった。
 そんな彼に、少女はくすりと笑んで「いいよ」の一言。嗚呼、彼は顔が上げられなかった。もしもそこで少女の笑顔を見たなら、結局、泣いてしまいそうな気がしたから。
 だから少年は駆け出した。
「夜携帯に連絡するからっ!」
 その一言を置いて、駆けだしたのだ。
 そして満開の脳内が、その足を家に着くまで止めることは無かった。

「ただいまっ!」
 家に辿り着いた少年、バタバタと靴を脱ぎ散らかして、まだまだ走り足りないとでも云うかに自室への階段を駆け登った。
 そうして繰り開いた部屋――ベッドは六畳間の一番奥だけれど、パンクバンドの熱烈なファンの如くと頭からダイヴする。
 その跳躍は微妙に届かなくて、否、全然届かなくて、彼を受け止めたのは畳の網目である。衝撃は下階のダイニングを揺らし、テレビを見ていた母の怒りを買った。
「ちょっと! 煩いじゃないのっ!」
 すかさず二階まで飛んだ罵声に切り返す少年はまだまだ反抗期が抜けていないと見える。切り返すと云うよりキレ返すこのご時世だもの――少年だって――
「るっせぇババアっ!」
 と、こう返したのだけれど――
 下階の母は首を捻ったものである。その声、まるで楽しげにじゃれた子の嬌声にも似て、凄みの欠片も感じさせなかったもの。むしろ、どこか楽しげですらあって――
 だから母もそれ以上は口を噤んだ。依然として上からゴロゴロと息子の転がる音響いているが、もうこれは仕方が無いと諦めた。
「チッ、青春かよ、糞息子め」
 呟き、母は食べかけのポテトチップに手を伸ばした。

 少年は床を転がることに飽き足らず、再度ベッドへのダイブを敢行し、そのままトランポリンに乗るが如くと跳ねた。軋む木製ベッドには大変いい迷惑であったことだろうが、少年には嫌な音立てるそれも悲鳴ではなく己を言祝ぐ歓声であるかに――。
 そうしてようよう立ち上がり、開いた窓の向こうに散歩をする老人が見えた。少年はその老人に手を振りたいような気分になった。
「プロ野球の優勝パレードってこんな気分なんだな」
 断じて違う。
 否、語り部も優勝パレードの気分など味わい様も無い故これは想像だが、きっと違うのだ。
 まぁ、今の内に浮れておるが佳い少年よ。お前は一か月の後に少女の唐突な心変わりによってフラれてしまうのだから。
「先輩と付き合うことにしたの」――と。
 ん? おっと、これは語り過ぎた、か?
 え? 蛇足?
 えっと、その……
 少年! ナイスパレード!

                                   ≪――了≫


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Posted on 2016/06/25 Sat. 01:16 [edit]

category: ≪企画小説≫like a Sound Novel♪

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 小説 
tb: --   cm: 8

コメント

おお、まずはオーガナイザー夢月亭先生の投稿なのですね!
うん、こうして音楽を流しながら読んでみると、
どんどんこの音楽に意味付けと色づけがなされていくような
気がしましたよ!
ベッドにダイブするところまで絵に浮かぶようでした。
全体的にこの音楽のリズム感と少年の浮き足だった気持ちが
リンクしてますね^^
って最後えっ、えっ!? Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)
どっちなのどっちなの!?
最後のちゃららら〜ーのフレーズはそういう意味!?
ってなっちゃいましたよ(笑)
わたしもやってみたいけど難易度高そう!

URL | canaria #-
2016/06/25 15:20 | edit

( ´・ω)こ(   ´)ん(   )ば(・`  )ん(・ω )は!
(久し振りにこれ↑使ってみましたw)

ノリノリはっぴーな音楽とともに気分が浮かれるような内容…
なのに、最後のオチはあんまりにも…(笑)
まぁ…そういう年頃の女の子の心は変わりやすいものですが…(´;ω;`)

そのオチで、僕はバッタリと倒れる様に崩れ落ちる坊主頭の15歳を想像しました(笑)
せっ…せつない…w

URL | いぬふりゃ☆ #-
2016/06/25 23:06 | edit

Re: タイトルなし

>canariaさん
こんばんは!
おっ、読んでくれましたか~^^ありがとうございます♪
もうですね、曲をひたすらリピートで聞きながら書いたんでノリノリでした。笑
一人で超楽しかったです。w

最後は「ナイス」って言葉を付けたしたくてああなっちゃいました!
まぁ15歳だから仕方が無いですよね!うん!w

URL | 夢月亭清修 #-
2016/06/26 00:23 | edit

Re: タイトルなし

>いぬふりゃ☆さん
こんばんは!
読了ありがとうございます^^

少年の浮かれ方はともかく、オチは結構リアルじゃないですか?笑
あるある話というかw

あ、僕もこの少年はボウズかスポーツ刈りのようなイメージでした!
短い文章であれですが、野球は好きなのかも…というとっかかりがあったのでなんとなく^^

これだけ浮かれたのだから落ちる時も半端じゃないでしょうね。笑
暗い曲で書くなら続編も楽しそうです^^

URL | 夢月亭清修 #-
2016/06/26 00:26 | edit

噛みの告白に神を見たかもしれない。受けたあー^^
知らない誰にでも笑顔を振りまいてしまう気持ち、わかるよ~
良かったねえと思いきや・・・

ああ、語り部さん。何ということでしょ・・・
甘酸っぱい浮かれ少年の青春ナイスパレード、楽しかったです。
(こちらも間もなく出来上がります。ご連絡いたしますね)

URL | けい #-
2016/06/27 23:48 | edit

Re: タイトルなし

>けいさん
こんばんは^^
やった!ウケたウケたw(まさかの神級!?w)

めちゃくちゃ嬉しい時ってそういう気分になりますよね~。
ところがフラれてしまうのです。
少年には知る由もないことですが^^;

読了ありがとうございます!
けいさんの作品楽しみにしていますね~♪

URL | 夢月亭清修 #-
2016/06/28 01:13 | edit

こんばんは。
はじめまして……でしたか……?

音楽を聴きながら読むと、少年の浮かれようが目に浮かびました(笑)
周りに幸せを振りまきたくなるこの感じ、何となくわかる気がします。

違う高校に行く彼女は新しい出会いが多くて、少年は少し不利かな。
なんて思っていたら、語り手さんが、ああっ……!

それでも、告白した勇気にナイス!ですね(^^♪
音楽と合わせて小説を書くのは面白いですね~!
楽しく読ませていただきました!

URL | スカイ #-
2016/07/07 01:20 | edit

Re: タイトルなし

>スカイさん
はじめまして……でしょうか?笑
いつも読み逃げして申し訳ありません^^;
ご訪問とコメントありがとうございます!

少年の浮かれよう、想像していただけて嬉しいです(∩´∀`)∩
ほんと、告白した勇気はナイスなんですが……まぁ相手が悪かったということでw

音楽を具材にして文章を書くのって新鮮で楽しいですよ^^
気が向いたらスカイさんも是非♪

URL | 夢月亭清修 #-
2016/07/07 20:04 | edit

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