夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

たまには……  

雑記です!

三月は年度末で決算期、ということで仕事に追われている方も多いのではないでしょうか?

僕もそれなりに慌ただしく働いていましたが、休日はしっかり取ることができたので助かりました♪

さて、休日の使い方と言えば僕の場合釣りに行くか小説を書くか――のどちらかであることが多いのですが、三月は色々あって、どちらも選ばず飲んだり食ったりしていました。笑
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まずは引越しをする友人と飲み――
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後輩の結婚式に参列し――
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会社の人事異動前に送別会を実施し――
(花の無い極寒のお花見でした。笑)

暴飲暴食で胃酸過多傾向です………

それから、胃酸じゅるじゅるのままディーラーに通ってました。
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先日無事納車♪

小っちゃくてボロい中古の軽からそれなりの軽に^^ロッドホルダー付けたので新しいロッドなんかも買ってしまいました。

今日はそのニュータックルに入魂するべく久しぶりのバス釣りに行ってきましたよー!
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ってお前かっ!

ものすごくバスっぽいアタリだったので一冬の想いを込めてフッキングしたのに……過去最大の糠喜びでした……。

結局バスは釣れず。笑

昨夜の大雨が効いてしまったのか何なのか……事前情報と違い浮いているバスが全然いませんでした。が、フナにとっては恋の季節が始まりつつある様子でした^^所々桜も見えたのでフィールドの雰囲気はすっかり春めいて、ボートからの眺めは気持ちよかったです。

とまぁ、そんなこんなで珍しくも三月はとても楽しく過ごしておりました。(こんなリア充な月はまたとない!)

脂肪も蓄えたことですし、四月からの新年度も頑張って生活していこうと思います。

最後の写真は結婚式で出会った先輩夫婦の娘ちゃん↓
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ヤヴァイ、激カワ。

余所の子も可愛いけれど、友人の子となるとまた一味違う。


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Posted on 2016/03/29 Tue. 22:09 [edit]

category: 未分類

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≪企画小説≫like a Sound Novel♪with けい  

『like a Sound Novel♪』は楽曲と楽曲のタイトルを御題掌編小説を書く企画です!

ですが、掌編小説じゃなくてもOK! なんでもOK! 作品と思えるモノならバッチコイ。笑

今回はこの企画に小説ブログ『憩』のけいさんが参加して下さいました♪

けいさんは現在ブログにて『シェアハウス物語』を執筆中です。

個性豊かで、それぞれに事情を抱えたキャラクター達が一つ屋根の下で時にまったり、時にシリアスにドラマを展開しています。

主人公の宇宙(そら)君が入居してまだ間もないのに色々起こるったらない。w

僕の個人的な感想を一言で表せば(勝手に申し訳ありません…)――『一つ屋根の下の群像劇』でしょうか。青春群像でもあり、宇宙君から見た一つの空間でもあり……箱庭に本当に多くのものを詰め込んでいる楽しい小説です^^



さてさて、そんなシェアハウス物語の作者けいさんは、今回当企画に英文自由詩を贈ってくださいました。

御題はこちら↓

百景というバンドの『陽炎レールウェイ』です。

けいさんの書いてくれた詩はこの御題にぴったりハマる優しい作品です♪

どこか遠くを想うようでいて距離を感じさせない、そんな詩だと思います(∩´∀`)∩

是非、音楽を聴きながら楽しんでみてください→Just a short poem KAGEROU RAILWAY  (Hyakkei)

☆―――――――☆
同じ御題で書かれた他の作品はこちら↓
『陽炎の先』 秋田藻溜
『異界列車』 夢月亭清修


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Posted on 2016/03/28 Mon. 22:03 [edit]

category: ≪企画小説≫like a Sound Novel♪

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tag: 小説  掌編  御題 
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小説:紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.4  

     紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.4



 少しだけ、思い出話をします。
 一人っ子で鍵っ子の小学一年生、そんな私の放課後の日課は、高校三年生の彼に会うことでした。晴れの日は公園で待ち合わせ、雨の日は彼の家にお邪魔するのが決まりです。
 今思えば、私はこの日課に随分と救われていたのでしょう。学校に友達はいませんでしたし、家に帰っても両親の帰りは遅く、怪異に怯える私には放課後の過ごし方など見当も付きません。だから彼に会えることを、私は毎日楽しみにしていました。何かしらお互いの用事で会えない日など、とても悲しかったことを覚えています。
 六歳の私から見た彼は大人で、優しくて、頼りがいがあり、誰よりも安心感をくれる存在でした。そんな彼の特徴と言えば、まず第一に、私と同じ力を持っている、ということでしょう。
 そう、彼も見て、聞いて、触れることのできる人だったのです。ですから私と同じモノを認識し、それについて教えてくれる先生のような存在でもありました。
 彼の名前は緑ヶ丘誠、近所にある酒屋の長男で、本当に昔から、私に優しくしてくれていたお兄さんです。
 彼と遊ぶのは本当に楽しくて、時には彼の妹である緑ヶ丘翠さんや、幼馴染の青木祐介さんも一緒でした。
 三人との思い出の無い幼少期を過ごしていたら、私は歪んだ娘に育っていたのかもしれません。だからこの三人にはとても感謝していて、私、三人が大好きなんです。
 三人のおかげで今の私があると思うからこそ、めげずに高校にも通えているのです。
 嗚呼、少し話が逸れてしまいましたが、昔、こんなことがありました。夕暮れが優しく包む公園で、彼が私にこう言ったのです。
「なぁ、いつか俺が店を開いたら、紅葉、手伝ってくれよ」
 今思えば信じられませんが、高校三年生の彼が小学一年生の私を誘ったのです。一緒に働かないか――と。
 店を開くことがどういうことかまるで分かっていない私は、大人になったら誰でも想い通りの職に就けるものだと疑わなかったこの頃の私は、ただ誘ってもらえたのが嬉しくて、何も考えずに頷きました。
「いいよ! どんなお店を開くの?」
 彼は私の頭を撫でて答えます。
「そうだな、どんな店がいいかなぁ。実はまだ決めてねぇんだ」
「じゃあさじゃあさ、私お花屋さんが良い!」
 おそらくその答えを予想していたのでしょう。想像通りのメルヘンな答えをした私に、彼は苦笑いが隠せないようでした。
「どうしてお花屋さんなんだ?」
「だって、みんな笑っているもの。店員さんも、お客さんも、綺麗なお花に囲まれて笑っていて、なんかいいかなって」
「そうだな、みんなが笑ってるってのは、すげぇ良いことだよな」
「でしょ!」
「よっしゃ、じゃあみんなが笑顔になれるお店、これに決まりだな」
「お花は?」
「いや……お花はちょっとなぁ…」
「なんでー!」
 私と彼のこのやり取りは、未だに記憶の中で鮮明な映像として残っています。彼との思い出には他にも楽しいことがいっぱいあったはずなのに、それでもこの記憶が一番の宝物のように心に残っているのは、一体なぜなのでしょう?
 ともあれこの約束は果たされたのです。いいえ、現在進行形で、果たされている――という感じでしょうか?
 両親が身罷られた後、二十四歳で彼は店を開きました。そしてさらに三年後、高校一年生となった私がその店でアルバイトを始めたのです。
 店の名前は野良猫達(ストレイキャッツ)。元々酒屋だった彼の家の一階を改造してできた、とても小さなBAR。
 野良猫達は住宅街の真ん中に不似合な真っ赤な提灯を軒下にぶら下げて、予定さえ入らなければ毎晩営業しています。
 みんなが笑顔になれるお店を目指して、マスター、結構頑張っているんですよ?

     *

 学校が終わり、夕方の六時から野良猫達でのアルバイトが始まります。開店準備はマスターが五時から行っているので、私が行く頃には決まって店内のBGMも掛けられて、もうすっかりお客様を迎える準備が整っています。
 店内は少し狭い長方形で、入口から右にカウンター席が五席、左に二人用のテーブル卓が三つ、全部で十一席です。一番奥にあるテーブル卓はマスターのこだわりで大きなワイン樽をそのままテーブルとして設えた物が置かれており、祐介さんと翠さんの指定席となっています。
 そのワイン樽の色と合わせ、渋みのある木目ばかりを選んで内装が作られているのもマスターのこだわり。殺風景ながらも調和のある店内になっています。
 私としてはもう少し調度品で飾っても良いように思うので、今は提案する機会を窺っています。ああそうだ、BGMもできれば変えたいと思うんですよね。マスター、いっつも自分の好きな古いロカビリーばかり掛けているんですもの。もうちょっとお洒落な曲を掛けてもいいと思うのに……良く分からないけど、ジャズとか…。
 まぁそんな風に色々と思う所はありますが、基本的に上客はご近所さんばかりなので、店内にはいつも顔見知りばかり、和気藹々とした空気が流れています。三年でこの店が地域に根を張ったと言うこなのか、マスターがもともと地域に根を張っていたと言うことなのか――それはたぶん、両方なのでしょう。
 ともあれまだ始めて三日目のアルバイトですが、私も「ああ、柿川さんとこのお嬢ちゃんかい」なんて感じでそこそこ心地よく働けています。ただ今日は学校で色々あった為、私、ちょっぴり疲れていました。
「やだっ! 元気の足りない紅葉も可愛いわっ!」
 お客様も一通り途切れた後に、翠さんと祐介さんが家から出てきて、翠さんの第一声がそれ。テーブルを拭いていた私に駆け寄って抱き着き、おでこに頬ずりをしながら――です。
「翠さん、駄目です、帯が解けちゃう…」
「むふふふぅ、良いではないか良いではないかぁ」
 私、仕事中は藍色で観世水柄のシンプルな浴衣を着ています。ちなみに帯は紫。これらはマスターが用意してくれた物で、昨今の流行り浴衣と違って地味な品物ですが、そこがいかにも女中っぽいと周囲から妙に好評を得ています。マスターの得意顔は若干鼻につく気もしますが…。
 まぁそんな女中姿の私を鼻息荒く翠さんが玩具にするのも早何度目でしょう。
「こら翠、紅葉ちゃんが困ってるだろ」
 祐介さんが翠さんを私から引き剥がします。穏やかな言葉遣いとは裏腹な、遠慮のない羽交い絞めです。
「やん! 祐ちゃん離して! 私もっと紅葉と遊びたいのー!」
「紅葉で、の間違いだろう?」
 祐介さんの羽交い絞めが本気だからか、翠さんが本気で手足をバタつかせます。いいえ、翠さんが本気で暴れるのが分かっているから、羽交い絞めにも力が入るのか――幼馴染で、二十五歳の同い年で、そして新婚夫婦の二人の遣り取りは卵と鶏みたい。
 私にはそんな二人の掛け合いがとっても素敵に見えます。羨ましいなぁ、なんて思いながら。
 羨ましいと言えば、翠さんの美貌は誰もが羨む――と言っても過言ではないでしょう。細くてスタイル抜群、その上肌は雪花石膏のよう。おまけに美しい天然の金髪です。
 どうも緑ヶ丘家には何代か前に海外の血が混ざっているらしいのです。翠さんの髪の色はその先祖帰りとか隔世遺伝と呼ばれるものの類。幼い頃はそれで苦労されたとも聞きますが、今では自慢の髪のようです。しかし――
 その自慢の長髪も羽交い絞めにされて揺れているとあっては、なんだか滑稽なような……。刺すだけで役割を果たさない、トレードマークの赤いカチューシャもズレ落ちそう……。
翠さんはアパレルショップの新任店長さんで、私にとってはファッションリーダー的存在でもあるので、こんな時は羨ましい反面なにか悲しいような……。
「おいおい、他に客がいないからってイチャつき過ぎだ、二人とも」
 そう言って厨房から出てきたのは濃紺の作務衣姿のマスター。頭には白いタオルを調理帽子代わりに巻いています。初対面の人には「沖縄の出身?」と誤解されがちな少し彫の深い顔にその姿は妙なミスマッチですが、これがマスターの仕事服。顎に蓄えた無精髭が私には余計に見えます。
 まったく、剃ればもうちょっと紳士に見えるのに…。
 この二人兄妹に祐介さんを加えた三人が、この地域で良くも悪くも有名な幼馴染三人組。もうすっかり大人ですが、今でも年配のお客様には子ども扱いされがちで、三人の悪戯話なんて出てきた日には三人赤面して俯くのが常なんです。今は私も含め四人だけなのでそんなことにはなりませんがね。
 まぁとにかく仲の良い三人なので、このやり取りもひょっとしたら何百回と繰り返して来たのかも知れません。マスターの言葉に咄嗟に反応した二人が、すかさず離れて「いや、違うから」の言葉が綺麗に揃ったこと。
「今日は何にするんだ?」
 マスターのその質問も、この店ができてから何度も繰り返されたモノなのでしょう。
「私は親子丼とサラダ、あとビールね。祐ちゃんは?」
「僕は生姜焼きを定食風に」
「あいよ、ビールもな」
 そう言って厨房に戻るマスターは笑顔です。繰り広げられたいつも通りの遣り取りや、いつも通り二人に食事を振舞えることに満足しているみたい。私は指定席に座った二人のビールをサーバーから注ぎます――アルバイト三日目、ビールくらいなら慣れたものなのです。
 そうそう、ここ野良猫達の一階奥と二階は勿論マスターと翠さんの生家なのですが、結婚してからは祐介さんも一緒に住んでいます。彼の実家も店から徒歩三分の距離にありますが、結婚したなら出ていけと両親に言われたようです。
 ごもっともな話かも知れませんが、かといって祐介さんは転職したばかりで、翠さんも「こんなに早く結婚することになるとは」と言っているくらいですから、たぶん、以前から結婚に向けて貯蓄していたわけでもなかったのでしょう。ならば賃貸を借りるよりはここに住んでしまったほうが効率よく貯蓄ができるぞと提案したのがマスターでして。
 そう言った経緯で、二人とも心のどこかで望んでいたであろう《夢の幼馴染三人暮らし》に賛同したそうです。
 ですから共働きのお二人がこうして夕食を店で取るのもほぼ毎晩。アルバイトの私と顔を合わせるのも、これからはほぼ毎晩となるのでしょう。
「祐介さん、今朝はありがとうございました。二杯目は私が奢りますから、好きなのを頼んでくださいね」
「おっ、ありがとね、紅葉ちゃん」
 事情を知らない翠さんが祐介さんに尋ねます。
「あら? 今朝何かあったの?」
「ああ、今朝は紅葉ちゃんを学校まで送って行ったんだよ。町はずれで偶然会ってね」
「ええぇ、いいなぁ、私も送って欲しかったのに」
「ならもっと早く起きろよ。翠のあと五分……むにゃむにゃ、は長いんだよ」
「あら祐ちゃん、その話するの? その話は紅葉の情操教育上よろしくないんじゃない?」
 翠さんが突然そんなことを言い出したものだから、私の中で急速に余計なイメージが膨らみ始めてしまいました。
 ちょ、え、それってひょっとして! みたいな。
「もうっ! 子供扱いしないで下さい!」
 少しだけ赤くなってしまった顔を誤魔化す為に、私はそう言って二人に背を向けました。ビールを運んだお盆を抱く手にも、自然と力が籠ります。
 ですが翠さんにしてみれば私のその反応こそが御馳走だったのでしょう。ほぅと溜息一つ、祐介さんに真顔で言うのです。
「紅葉可愛すぎ……ねぇ、食べていいでしょ?」
 食べるって! それは一体どういう意味なのですか!
 私は余計顔を赤くしてしまって、これはもう敵わないと、「お料理手伝って来ます!」の一言を置いて厨房に避難。料理しているマスターの背中姿を見てホッと一息つきました。
 翠さん、私が中学三年生ぐらいからずっとこうなのです。私のからかい方に性的なアレコレを絡め始めたのは……。
 そりゃあ勿論、私だって年頃ですから、興味が無いわけじゃないですよ……でもその、やっぱりまだちょっと刺激が強いと言うか何と言うか…。
「はははっ、紅葉、またからかわれたなぁ」
 厨房の入り口は暖簾で区切られているだけなので、おそらく私達の会話が聞えていたのでしょう。マスターは呑気に笑いました。
「なんか私、今日は赤面しっぱなしだよ」
「学校で何かあったか?」
「うん。今日は結構、キツかった」
 そこで私は今日の一部始終を思い出して溜息を一つ。そう、本当に今日はキツイ一日でした。
「へぇ、まぁ確かに、翠の言うとおり今日の紅葉は疲れてるよな。どうしたんだ?」
「ええっと、今はその……」
 ここで私が躊躇う理由は一つしかありません。そう、疲れの原因が怪異絡みだからです。いえ、自爆もありましたけれども……。
 マスターに私達の遣り取りが聞こえていたように、ここでの会話も二人に聞こえてしまうかも知れません。ですから――
「………」
 背中で会話していたマスターもちらとこちらを振り返り、無言を寄越してから言いました。
「――紅葉、今日は≪晩≫も手伝ってけ」
「………」
 話は聞いてもらいたいし、まぁ仕方がないか、と私は無言で頷きました。
 ≪晩≫、と言うのは野良猫達の閉店後のことを指してマスターが使う言葉です。この店は夜の十一時に閉店しますが、その後も、実は秘密の営業を続けているのです。
 マスター、「今日は」なんて言い方をしましたけれど、慣れる為にということで実はここ三日間は毎晩私も晩を手伝っていました。高校生の私が十時以降も仕事をするなんて本当は良くありませんが、そこはアレです。ご近所の個人経営の店で親も公認。昔から世話になっていたマスターの所だからと、私の両親も許可してくれています。
 でも、まさかこの店の晩の営業が、≪あんな≫だなんて誰が想像できるでしょう? 私だって、最初はかなり吃驚したんですよ?

                                        ≪――続く≫
前話→『紅葉の相棒』 No.3  次話→『紅葉の相棒』 No.5


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Posted on 2016/03/27 Sun. 00:07 [edit]

category: 小説:紅葉怪奇譚Ⅰ

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小説:紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.3  

   小説:紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.3


 校門の前で車を降りるのは流石に恥ずかしくて、私は少し離れた田圃の畦道で祐介さんを見送りました。走り去る白いミラからは生えたように祐介さんの右手がひらひらと揺れていて、その気さくな様子は「さようなら」ではなく「また後で」、と言っているようでした。
 バックミラー越しに見えるかしら、と思い私も右手を上げて答えます。「また後で――」と。
 実際、よほどのことが無ければ夜にアルバイトで顔を合わせる人ですから、そう言っているようだと思うのは私の主観です。ですが、袖振り合うも他生の縁――手を振り合うのはかなりの縁――かと。今晩は祐介さんに一杯奢らなくっちゃ、と私は思いました。
 もう一度時計を確認すればホームルームの始まる五分前です。私は畦道を、真っ直ぐ学校へと向かって歩きはじめます。
 私の通う市立向稜高校の校舎は、山を背に抱き左右前方に一面の田圃を携えて、長閑な景色の中に威風堂々の佇まいです。もしもその全てが木造であったなら、緑豊かな自然に馴染み過ぎてタイムスリップでもしたような錯覚に囚われることでしょう。まぁ本来乗るはずだったバスに乗ってバス停を降り、国道から校門まで一直線に走る道路を歩いてきたなら、その感も多少薄れはしますが。
 ただ、私が在籍しているクラスの教室だけは本当にタイムスリップしたかの雰囲気を醸し出しています。校門を潜り、一階にある一年生の教室を全て素通りし、体育館へ向かう廊下の途中から飛び出した渡り廊下を渡ると、そこが私の在籍する一年D組の教室です。いいえ、教室と言うよりは、一年D組の校舎――と言った方が正しいような。
 そう、一年D組の教室は正真正銘木造の旧校舎。正確には、取り壊されずに残った旧校舎の一部を使っています。
 なぜ? と私も最初は思いましたが、実にうまい具合に教室が一つだけ足りていないのです。その原因は入学者数の増加にあります。
 実は一昔前までは国道が開通しておらず、こんな山と田圃に囲まれたような学校ですから、非常に交通の便が悪かったんですね。駅の近くには商業高校や工業高校、普通科の進学校だってありますから、みんなそちらへの進学を望むのが普通だったのだそうで…。
 ところが国道が開通し学校の近くまで来れるバスが運行を始めると、入学者数は爆発的に増えました。以降の受験倍率は結構なモノで、きちんと定員を設けてもクラス一つ分はみだしてしまいます。
 そんなハズレ籤を引くのが決まって一年の末席であるD組というのも最早慣例、ということなのです。
 そんなD組の、時代を跨ぐかに旧校舎へ足を踏み入れて、廊下に他の生徒を見かけないのは、どうも私が最後の登校者であることを臭わせます。時間はまだギリギリ平気なはずですが、すっかり着席したクラスメイト達を想像したら、なんだか悪目立ちしてしまいそうで教室のドアを開くのが億劫でした。だから私はまだマシな方へ、黒板と離れた後ろの扉に手を掛けたのです。そこが彼女の真正面だということも忘れて――。
 本当は、今日は祐介さんから貰った勇気でもってして、隣の席の子に「おはよう」と声でもかけてみようかしらと考えていました。そのつもりでいれば、四文字くらいどもることもないだろう、と。ですが――
 扉を開ければ、私が想像してたよりもずっと砕けた雰囲気の教室内でした。みんなあちらこちらで立ち話の――まぁその声に耳を傾けていれば、そのくらいは扉を開かずとも想像に難くないのですが、ネガティブに物事を捉えるのが私の癖みたいなものでして…。
 しかしその雰囲気にホッとすることも私にはできなかったのです。教室内からいの一番に私に向けられた視線が、生きた人のそれではなかったのですから。
 彼女の視線、いいえ、視線と言っていいものかどうか微妙に判じかねますが、指定席にいる彼女の首がこちらへ振り向くのが分かった途端、視られている、と感じました。
 というのも、彼女の顔は腰まで届く長い髪に遮られていて貞子さながら、そこに浮かぶ表情が分からないのです。薄ら覗かせた口元は笑っているのですが、そこがまた不気味――。
 いつもと変わらぬ教室の隅、掃除用具入れの前に立ちんぼの彼女――そう、私が開けたのは、その彼女と真正面に向かい合える扉なのでした。
 途端に彼女に対する恐怖と不安を思い出し、私はさっと俯いて自分の席へ、廊下から二列目の後ろから三番目へと向かいます。隣の子に挨拶しようなんて意気込みもどこへやら。ただただ彼女と目を合わせないようにと、そればかりが頭の中を埋め尽くしていました。
 そう、彼女と目を合わせるわけにはいかないのです。だってまだ、私が視える人間だということは彼女には気付かれていないのですから。いいえ、この時の私は、絶対に気付かれてなるものかと、そう心に誓っていたのです。気付かれてしまったなら、きっと声を掛けられてしまうから――。
 それは最悪なことです。だってここは教室で、クラスメイトがいるのです。だから塩を撒くことも、逃げることもできません。また変な噂を立てられては敵いませんし、一年間はこの教室に通うことが決まっているのですから、成す術が無いとはまさにこのようなことを言うのでしょう。
 嗚呼、だから今日も、誰かと声を交わすこともなく、私は一人、静かに着席してしまったのです。



 旧校舎の教室に幽霊がいる、という事実は、実はこの学校の七不思議に数えられるくらい有名な噂です。というのも彼女、長い前髪でその顔を隠した不気味な彼女は、私のような見える人間の目から見て、非常にアクティブな行動をとっているのです。
 入学してまだ三日目だと言うのに、D組の生徒の大半がその存在を信じているくらいですから、そこからも彼女の行動力が窺えるというもの。
 これは入学初日のエピソードなのですが、教室に入るなり彼女の存在に気が付いた私が戦々恐々と自分の机で身を固くしている最中、室内ではデジタルカメラのフラッシュがパチパチと明滅を繰り返していました。
 私とは正反対に快活で朗らかな女子生徒の一人が「入学の記念に」と言って、できたばかりの友達数名と記念撮影をしていたのです。私はその様子を羨ましい気持ちで眺めながらも、内心は前髪さん(今思いついた幽霊の呼称です。長い呼び方では話しずらいので…)の一挙手一投足にビクついていたものですから、その現場をはっきりと目撃してしまいました。
「きゃあああああ!」
 入学式の開式を待つ長閑な教室内に、突如女生徒の悲鳴が上がりました。悲鳴を上げたのは三人、撮影していた子と、ついさっきまで肩を組んでカメラに笑みを向けていた二人の子。三人で寄り合い撮れた写真を確認していて、突然――です。
 彼女たちに悲鳴を上げさせた写真とは一体どんなものだったでしょう、遠目に三人を眺めていた私には分かりませんが、想像はできます。だって、ある写真を撮る瞬間、前髪さんが宙を踊って二人の背後に回り込むのを、私は目撃しましたから――前髪さんが右手にピースサインを作る瞬間だって、目撃していたのです。
 この時教室内にはクラスメイトが全員揃っていましたし、この教室で心霊写真が撮れたという話が広まったのは一瞬でした。翌日には誰かが先輩から別の噂話を仕入れて来て、そして今日――今日はまだ大人しい前髪さんですが、三日目にして前髪さんの噂はクラスメイトの誰もが一度は口にしている、そんな状態なのです。
 とは言え、実害は今の所ありませんから、現状は粛々と、普段と変わらぬ教室内です。みんなノートにメモを取ったり居眠りしたりしながら、担任教師である柳田道子先生の朗々とした歴史の講義を聞いています。
 二時間目なので私はまだ眠くもなりませんし、真面目にノートを取っていました。前髪さんへの警戒も、授業中は緩めています。
 授業中の前髪さんは指定席である掃除用具入れの前で立ちんぼの、それはもう大人しい様子です。一見して、自分も学生であるがゆえ授業を真面目に受けているといった雰囲気でした。
 私にとってそれは非常にありがたい状態ですから、できれば休み時間や小テストの間もそうしていてもらいたいものです。前髪さん、休み時間は活発に教室内を行き来しますし、小テスト中は流石に退屈だと言わんばかりにふらふら宙を彷徨いつつ、人の答案を覗き込んだりしているのです。
 それが私にとってどれだけ厄介か、前髪さんには分からないのでしょう。幽霊に分かれと言って分かるものかは怪しいですが、小テストを解かなければいけないのに、恐怖から冷や汗だくだくで小刻みに震えるとあっては、問題文を読み解くどころではないのです。これがいかに学生にとって困った状態かは、語らずとも分かっていただけるかと……。
 まぁそんなわけでして、前髪さんの存在に困りあぐねているのは実のところ私一人なのです。他のクラスメイトにとって前髪さんはいるのかいないのか定かになることの無い存在ですから、実害の無い以上、噂にしか語られることはありません。そして噂ですから、それを必要以上に論じようと言う奇特な生徒もいないわけでして。ですが――
 この二時間目の最中、前髪さんがやらかしました。ガタンッ! と、突然掃除用具入れが大きな音を立てたのです。
 みんな吃驚して後ろを振り返ります。授業に集中して前髪さんの存在を意識していなかった私もです。そこには――
 掃除用具入れの扉が殴りつけたように凹んでいます。そんな凹み跡、ついさっきまで無かったはずなのに――なぜ? どうして? と、クラス中の視線がその凹みに集中し、小波のようにどよめきが広がっていきます。
 私の目は、しかしクラスメイトより少し下の方へと注がれていました。そこには前髪さんが後頭部を抱えてしゃがんでいます。肩を小刻みに震わせて、何か痛みを堪えているかのように――
 え? まさか頭をぶつけたの? なんで? と私の眉間には疑いの皺がわずかばかり。そして次の瞬間――
『ふわぁぁぁぁ……ねむ…』
 この時初めて、私は前髪さんの声を聞いたのでした。まさかそれが欠伸だなんて……。
 そうなのです。おそらく前髪さんは、立ちながら居眠りをして、後ろへ倒れてしまったのでしょう。そうして思い切り後頭部をぶつけてしまって――
 前髪さんが立ち上がります。そうして、彼女はようやく自分に向けられた(正しくは自分の方向へ向けられた)クラス中の視線を知ってたじろいだのです。
 今まで幾度となく生徒達を驚かせてきたであろう彼女をして、流石にクラス中の視線を浴びたことは無かったのでしょう――当たり前ですが。
 そうして彼女は恥ずかしそうに、いえ、少しだけ嬉しそうにも見えるのは気のせいでしょうか? もじもじ俯き加減のしおらしさで、わずかに覗く口元を不気味な笑みに歪めて見せたのでした。
「おいこら! 授業を再開するぞ!」
 ざわついた生徒達に対して、暗にくだらんと言いたげな乱暴な口調でそう宣言したのは柳田先生でした。
 柳田先生は二十七歳の若い女の先生です。長い髪を後ろで一つに束ね、凛とした佇まいは憧れのガヴァネスさながらですが、今は切れ長の瞳を釣り上げて、若き日の荒っぽさを滲ませています。
 これに逆らえる生徒は少なくともD組にはいません。ですから、その先生も下らなそうにしていることだし、これは何かしら原因のある、そう、ラップ音などという怪奇現象とは一線を画す、ごくありきたりな現象に違いないと納得したのかもしれません。ざわついていた生徒達は、みんな掃除用具入れの凹みから興味を失い、あっさりと再開された授業へ戻りました。ええ、私を除いては――です。
 私はと言えば、そんな先生の言葉も耳に入らないくらい前髪さんに注意を奪われていたのです。視線を浴びて嬉し恥ずかしそうな彼女の様子があんまりにも意外だったから、と言うのもありますが、だって彼女、前髪さんは、クラス中の視線が彼女から柳田先生へと逸れていく中、なんと踊り始めたのです!
 少し屈んで左手と左足を同時に上下させるその踊りは、私も知っているモノでした。
 でもそんなの関係ねぇ、でもそんなの関係ねぇ――はい、オッパッピー!
「って小島よ○おかっ!」
 思わず、私は前髪さんにツッコミを決めていました。ガタンと椅子を鳴らして立ち上がり、それはもう結構な勢いで。
 いえね、実は私お笑いが大好きなんですよ。漫才もコントもモノマネも大好きです。単純に笑えるからと言うのも勿論その理由の一つですが、芸人さん達の繰り広げるトークってとっても素敵じゃないですか! 無遠慮な雰囲気の中にも「笑わせるんだ!」という目的の為の友情とかチームワークみたいなモノを感じるんです! 私にも年の近い友人がいたらあんな風にコミュニケーションをとりたいなっていう憧れと言うか理想と言うか――芸人さんって本当にカッコいいなって思います! そうそう! 最近の若いお笑い芸人さんって実際カッコいい人多いし、嗚呼もう本当に素敵!
 って今はそんな話どうでもいいですよね………。そう、思わず前髪さんにツッコミを決めてしまいました。柳田先生を除いて唯一教室内に立ち上がり、凹んだ掃除用具入れに芸人の名前でもってして突っ込む私って! しかも授業中に!
 こんなに悪目立ちする事態がいったいどこの高校一年生にあるというのでしょう!(今この瞬間の私を除いて!) 生徒たちの視線が今度は私に集中しています。それは言葉にすれば「は?」みたいなポカンとした眼差しの大群です。私はもう恥ずかし過ぎて弁明の言葉も出てきません。でも何とかしなきゃって気持ちが内側では空回りして、体はわなわなと戦慄くばかり――嗚呼、顔がどんどん赤くなっていくのが自分でも分かります……。そして――
「はぁ…柿川、さてはお前、居眠りしてただろ?」
「え、いえっ、あの、その……」
 私の真っ赤な顔を見てそう思ったのか、それとも単なる叱責だったのかは分かりませんが、柳田先生のその言葉は私にとって当に助け舟でした。
「あの、その…す、すすすすみませんでした!」
 何とかそう口に出して、私は自分の席に座りました。依然真っ赤なままの顔が恥ずかしくて、教科書でそれを隠します。
 そうして再び授業は再開されましたが、どこかの席の男子が私のことを囁き合っているのが分かります。嗚呼、きっと今日から私のあだ名が影で「よ○お」に決まったに違いないと、泣きたいような気分でした。
 しかし、泣きたくなったのはこの瞬間だけではありませんでした。この時の私はクラスメイトに対する恥ずかしさでいっぱいいっぱいで、自分が本当に警戒するべき重大な事柄を失念していたのです。
 だってそう、私がツッコミを決めた相手が一体誰だったのか――クラスメイトではありませんよね?
 この日の三時間目の授業が始まってしばらくが経ち、赤面も落ち着いてきた頃、ようやく私はそれに気が付いたのです。左斜め後ろの掃除用具入れの前から、ずっと背中に刺さり続けていた視線に――そう、それは紛れもなく死者の、彼女の視線です。
 授業に集中することでやっと落ち着いてきた私の心を、今度は羞恥心ではなく、恐怖が黒く塗りつぶしていきました。

                                        ≪――続く≫

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Posted on 2016/03/23 Wed. 02:01 [edit]

category: 小説:紅葉怪奇譚Ⅰ

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

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小説:紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.2  

     紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.2



 塊のような、恐ろしい怪異が素早くないのは不幸中の幸いというものでして、そしてまた、駅とは逆方向に進んだがゆえに祐介さんに会えたのも、これもまた、不幸中の幸いと言えるでしょう。
「あれ? 紅葉ちゃん? どうしてこんなところにいるの?」
 社用車である白いミラの窓ガラスを下げて、祐介さんが私に声を掛けてくれました。彼は配置薬の営業マンさんで、マスターの幼馴染です。幼い頃から私に良くしてくれたマスターの幼馴染ですから、私にとっても顔馴染み。最近ではアルバイトの関係で毎日のように顔を合わせている二十五歳のお兄さんです。たぶん、祐介さんもこれから仕事に向かうところだったのでしょう。
「あ、祐介さん、おはようございます」
 私はハンカチで額の汗を拭いながら答えました。
「おはよ、紅葉ちゃん。この時間にこんなところにいたら、駅発のバスに間に合わないだろう? どうかしたの?」
「あっ…いえ、ちょちょっ、ちょっと、あの、その、寝ぼけてたみたいで…」
 我ながらなんと苦しい言い訳でしょう…。寝ぼけた夢遊病者だって、こんなに家から遠い所までは出歩かないでしょうに…。でも祐介さんは――
「へぇ、まぁ今日はいい天気だもんな。気持ちは分かるよ」と、何やら私の思惑の外で独りごち、頷いてくれました。
 祐介さんは何かと人を疑わない性格をしているのです。優しすぎる人柄、とでも言えば伝わるでしょうか? 優しすぎて、他人に対する目線がやたらとポジティブなのです。だから人から騙されたりしないか、私のような若輩者でも心配になるときがあります。まぁ今は、その優しさに甘えさせて頂きますけれども…。
「乗りなよ紅葉ちゃん。学校まで送ってあげるよ。こんないい日には散歩もしたくなるだろうけど、やっぱり遅刻はいけないからね」
 黒縁眼鏡の中で、祐介さんの瞳がにっこりと笑っていました。その柔和な顔に私も微笑んで、二つ返事で「はい」と答えそうになりましたが、いえいえ、流石にそれはご迷惑でしょう。祐介さんだって、これから出勤しなければいけない身でしょうから。
「い、いえ、大丈夫です。祐介さんだって、これからお仕事ですよね?」
「気にしないでいいよ。もう出社済みなんだ。もう一軒目のお宅を回ってきたところなんだよ」
「え? こんなに朝早くにですか?」
「ん?」
「え?」
 何やら会話にズレを感じた私は、恐る恐る自分の腕時計を覗き込みました。それはアンティーク調の、銅で作られた文字盤の片隅に楓のマークがうっすら彫り込まれている時計。マスターに翠さん、そして祐介さん、三人からの入学祝です。私の年齢よりもずっと大人びた品なのですが、私もいたく気に入っていまして、毎日肌身離さず持ち歩いています。そこには――
「えっ、えええええええええっ!」
 ついつい素っ頓狂な声を上げてしまったのは、私の思っていた以上に時間が経っていたから。とてもじゃありませんが、今からバスに乗るのは不可能です。あの塊を振り切るのに、私はかなりの時間を費やしたことになります。そんな私を、祐介さんは笑顔で促しました。
「はははっ、ほらほら、早く乗った乗った」
「うう…すみません…」
 申し訳なくて、少しだけめそめそしてしまいました。ですが祐介さんの人を疑わないあの調子ですから、走る車内で話し始めると、すぐにこうしているのが当たり前のように思えてくるから不思議です。とにかく祐介さんは、人に気を使わせない達人なのです。
「今日で入学して三日目だよね。どう? 学校は」
「ええ、まぁ…ぼちぼちです」
 大阪の商人じゃあるまいし、の私の煮え切らない受け答えは、それでもその通りです。まだ友達と呼べるようなクラスメイトもいませんが、それでも、中学校や小学校の頃のような変な噂を立てられてはいませんから、全然マシと言うものです。と言うのも私、中学校の頃は影で『塩かけ婆』と呼ばれていました。
 塩かけ婆――それはたぶん、某アニメで有名な妖怪、砂かけ婆をもじっているあだ名なのでしょう。私、塩はよく撒きますから…。
 これはマスターの直伝なのですが、人の形をした幽霊には塩が良く効くのです。ですから今だって、懐には小さめのマチ付きポリ袋に塩を入れて忍ばせてあります。それを盛大に撒きながら道を逃げていて、クラスメイトに目撃されてしまったのです。
 それまでは、話し掛ければどもってしまうような人見知りの、ただの暗いクラスメイトだった私ですが、その件を境に「ひょっとしたらちょっとヤバい奴なんじゃ…」という噂の付き纏う、話し掛けたくないクラスメイトに見事昇格してしまいまして…。
 おかげさまで友達のいない中学時代を無事卒業してしまったわけです。とほほ…
 小学校時代もまぁ似たようなものです。見えないモノを怖がるなんて気味が悪くて当たり前。おまけに話すのも苦手なのですから、ろくに弁解もできないまま、六年間をやり遂せてしまったわけです。
 さてさて、そうして最近高校へと上がった私ですが、今のところ問題なく過ごせています。やはりコミュニケーションはまだまだ苦手ですが、今後クラスの役割分担や委員決め等ありますから、それを切欠に友達を作るぞ! と意気込んではいるのです。ただ…
 ただ一つ、不安要素があります。いえ、自分の性格を考えれば不安要素なんて沢山あるのですが、それとは一線を画す不安――つまりは、怪異絡みの不安要素。
「はやく友達ができるといいね」と、にっこり微笑む祐介さんにこの話はできません。祐介さんは怪異となんら関わりの無い人なのです。仲良しのマスターでさえ、祐介さんに怪異の話なんて一切しないくらいですから。
 おそらくマスターは、祐介さんだけでなく、翠さんにも、いいえ、力の無い人には絶対に話さないのでしょう。きっと、余計な心配を生むだけですから……。
 私にもその気持ちは痛い程に解ります。私だって両親に、そんな話を、こんな悩みを打ち明けたことはありません。そんなことで、大好きな両親を困らせたくはありませんから。
 だから今も、私はその不安を呑みこんで、ぼちぼち、などと曖昧に答えたのです。そう、教室に幽霊がいる――なんて、口が裂けても言えませんでした。
 だから、今晩その幽霊についてマスターに相談してみようかしら、と思案顔の私に、何かしら別の意味で気を使ったのでしょうか? 祐介さんが言いました。

「外灯と言うのはね、人の為に、つけるんだよな。僕はどれだけ、外灯をつけられるだろう――」

「なんです? それ」
 私の頭の上に浮かんだクエスチョンマークに、祐介さんは笑顔で答えます。
「相田みつをの言葉。これ、気に入っているんだ。この言葉を思い出すとね、少しだけ人に優しくなれる気がするんだよ」
「祐介さんは十分優しいじゃないですか」
 私は思ったままそう口に出したのですが、祐介さんは首を横に振りました。
「いいや、まだまださ。それに、これからも沢山の人と出会っていくんだ。いったいいくつのを外灯を灯せるだろうかって、常に自分に問い掛けていくことが大切だよ」
 なるほど、そういうものかと、人付き合いの苦手な私でもその言葉には含蓄を感じました。
 祐介さん、実はこういう素敵な言葉がすらすらと出てくる程の文学好きです。自身も小説家を夢見て仕事をする傍ら執筆しているんだとか。私は祐介さんの書いた小説を読んだことは無いのですが、いつか読んでみたいなと常々思っています。
 嗚呼、私、教室の幽霊のことは忘れてなんだか嬉しくなりました。外灯の言葉はこれまた祐介さんが私の思惑の外で勘違いをして出てきた言葉ですが、こんな言葉を教えてくれる人が傍にいることに、とても嬉しくなったのです。だから、私は尋ねました。
「他に、人間関係に関する格言とか、素敵な言葉はありますか?」
 祐介さんはまた笑って答えます。
「たくさんあるよ。例えばね――」
 そうして一つ一つ、味わいを確かめるように言葉を紡ぐ祐介さんの声に耳を傾けている内に、車は学校の傍まで辿り着いたのでした。

                                      ≪――続く≫

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Posted on 2016/03/20 Sun. 13:05 [edit]

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小説:紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.1  

   紅葉怪奇譚 『紅葉の相棒』 No.1

 ――≪開幕歌(2016.03.17書き下ろし)≫――

 柿川望む稲荷の表

 佇む貴女の夢を語りて

 語り部は非じ

 夢現なればこそ

     *

 多くの人達が行き交い、言葉を交わし、走る車の音騒々しい――いわゆる喧騒というモノが駅前の繁華街にしか存在しない場所、ここはそんな地方都市。駅から車で三十分も走れば、景色は繁華街から住宅街へ、住宅街から田園風景へと姿を変えます。そうここは、都市を謳ってはいても、とても小さな町なのです。
 広大な田園風景は山々の麓まで続き、そそり立つ雄大な山は壁となって青い空以外の景色を覗かせてはくれません。あの壁の反対側には別の町があるのでしょうか? それとも、樹海の生気が凝って形を成した、妖魔や神々の踊る深山幽谷へと続くのでしょうか? この町で生まれ、この町で育った私には知る由もありません。ただ、地図で見る限りだと前者が存在しているようなのですが……。
 ともあれ、この町を出たことも無いような田舎娘の私ですが、それでも悩みと言うモノは尽きません。十代半ば、青春の真っ盛りですもの、致し方ありませんよね? でも――
 私がごく普通の娘であったなら、何に悩んだでしょう。勉学のことでしょうか? 将来についてでしょうか? 友人との仲違いに溜息吐いていたでしょうか? はたまた、恋の悩みだったりして………。
 私の悩みは、そのどれでもないのです。では、深窓の令嬢が身に纏う、儚くも美しい影のようなそれでしょうか? いえいえ、もしそうだったのならどんなに良かったことでしょう。深窓の令嬢の悩みなど想像も付かないままに羨んでしまう私、先程言った通り、田舎娘の私――私の悩みは、はた迷惑に眉の根本を寄せるような、ただただ困りあぐねてしまう類のモノでして…。
 幼い頃からそうなのです。原因は分かりません。ただ、私の名前が第六天魔王に祈り届けられ生まれた岩谷の鬼女と同じものだと知ったときは、だからかしら? と首を捻ったものです。たぶん、それはまったく無関係な事柄なのでしょう。私の両親が第六天魔王に祈って私を生んだとは、どうしたって思えませんから……。
 原因不明、つまり科学では解明されない私の悩みとは、生まれたときからの体質、変えようのない私の体質なのです。言うなれば視えてしまうこと、聞えてしまうこと、触れられてしまうこと――でしょうか。この世のモノならざるモノ達に――。
 それは時に、幽霊と称される死者の妄念です。
 それは時に、妖怪と称される何かです。
 それは時に、悪魔と称される信仰の影です。
 それは時に、それは時に、それは時に……。
 そう、多種多様な怪異と出会ってしまうこと、そして、それら全てを確かな存在として感じてしまうこと、これが私の悩みなのです。
 私はこの悩みの為に、友達のいない、寂しい十五年間を送ってきました。いえ、学校では、という話です。マスターと祐介さんと翠さん、そして宗次郎さん、この三人と一匹がいたから、私はそれでもやってこれましたし、もう一度友達作りに挑んで花の高校生活を満喫しようと意気込んでいたのです。
 冬になると雪の降るこの町では、まだまだ蕾の桜がようやく目に留まるようになった四月の頃。春の便りもまだ微かな入学式――その日、私のささやかで切なる期待を挫くかのように、出会ってしまった一人の幽霊のお話は、この物語の口火を切るに相応しいかと思われます。
 ようこそ、紅葉怪奇譚の世界へ。
 案内人は不肖私、柿川紅葉(かきがわもみじ)が務めさせて頂きます。
 どうぞ、ごゆるりと。

     *

 さてさて、私は走っていました。日差し豊かな朝、時刻は通勤の為に駅に向かう人達がちらほら見えるくらいの、そんな朝です。学校へ向かうはずだった私は、ただただ我武者羅に住宅街の中を全力で駆けていました。
 物語の始まりに高校一年生の私が朝日の中を走ると言えば、食パン咥えた快活な遅刻学生を想像するところかも知れませんが、決してそうではないのです。だからこの先の曲がり角で素敵な男性とぶつかったりするような展開は勿論ありませんし、食パンだって咥えていません。
 先程申しました通り、時刻は通勤ラッシュよりも前の比較的早い時間帯です。朝に強い私は朝食を家で済ませ、身支度を整えて家を出ました。部活動に参加していない、朝練の無い身としては早過ぎるくらいの出発です。なのに、人見知りで引込み思案な私は、恋に落ちる快活な遅刻学生と縁遠い私は、それでも走っているのでした。
 体育の授業は苦手ですが、だから鍛えようという志から走っているのでもありません。走るのなんて本当は嫌なのです。でも、それでも今は走らなくてはいけないのです。切羽詰まった、それ相応の理由が、私の背後に忍び寄っていたのですから――。
「嫌、お願いだからっ、どっかいってよっ……」
 息を切らせながらそう呟いても、それは一定のペースで私の後を追って来ます。こんな時はいつだって自分の鈍足を呪いたくなるものですが、それを嘆くよりもまず先にと、私の足は見知った住宅街の中を右に左に曲がり角さえあれば曲がるというくらい、滅茶苦茶に突き進んで行きます。考えるより体を動かせ! と、運動音痴な私が自分の危機に瀕して辿り着いた答えがそんな陳腐な言葉なのですから、どうにも諧謔的です。
 今日は油断していました。温かい春の日差しに浮れてふらふらと、また少し桜が花をつけたな――なんて呑気な心持で歩いていたから、うっかりあの四辻を渡ってしまったのです。
 あの四辻、とは――それは私の家の近所にある、車も通れないような細い十字路のことです。南町の中にある十字路だから、私は勝手に南十字なんて呼んでいるのですが、この道が私の体と非常に相性がよろしくないようで……。ここを通ると高確率で怪異と出会ってしまうのです。姿無きモノに呼びかけられたり、今日みたいに異形の何かに追っかけられたりと、今まで何度もそのような経験をしています。
 マスターからの受け売りですが、四辻は和洋問わずこの世とあの世の入り口と考えられているそうです。四辻の四という数字がいけないのでしょうか? 四つの方角へ延びる道――つまり四界へ通ずる、死界へ通ずる……って駄洒落かっ! と思わず突っ込みたくもなりますが、ともあれ私にとってこの道は本当によろしくない。この南十字は霊道、つまり死者達の通り道と重なっている為、余計私には良くないらしいのです。
 そんな道を懲りずにまた通ってしまう私って、なんて抜けているのでしょう……余計に悲しくなります。
 そんなわけでして、とにかく今は走らなければなりません。黒くて、形が良く分からなくて、目玉をそこかしこにいくつも携えた異形の何か、何か邪な気配をふんだんに纏うその何かが、ずりずりと体の一部をアスファルトに擦り付けながら、私の後を追って来るのです。捕まってしまったら、その後私がどうなってしまうのかなんて――嗚呼、考えただけでも恐ろしいです。
 しかし幸いなことに、その異形、私は「塊」と呼んでいるのですが、塊は得てして早い動きを見せません。こうしてやたらめったら曲がって走っていれば、私のような運動音痴にも撒くことができます。
 これもマスターからの受け売りですが、塊は色々な死者の妄念なり小さな妖怪なりを取り込んで次第に膨らんでいく、霊とも妖怪とも種を異にした怪異だそうで、それら妄念の塊ゆえに、想いのベクトルが一定に定まっていないのだそうです。俊敏に動けない理由もそこにある、とかなんとか。苦しみを訴えたいのか、妬ましさを訴えたいのか、道連れを探したいのか、悪戯をしたいのか、そこが定まっていないんだそうで……。私には全部同じベクトルの想いに聞こえてしまうのですが……。
 ともあれ、今私を追う塊は、これまで私が目撃してきた塊同様に俊敏ではありません。どうにか逃げ切れそうです。ただ……
 ただ、滅茶苦茶に道を突き進んでしまったので、いつしかすっかり駅とは逆の方向へと私は進んでいました。見知ったはずの住宅街も、焦りと恐怖に揺れる心の前には迷宮と化し――でしょうか。
 嗚呼、どうしよう、バスに間に合わないかも知れない……。
 塊を撒いて、ようやく膝に手を突いて休めた私の口からは、切れ切れの息が長い溜息を分割させていました。
 私って、どうしてこうなのでしょう…。

                                       ≪--続く≫

次話→『紅葉の相棒』No.2


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Posted on 2016/03/17 Thu. 17:34 [edit]

category: 小説:紅葉怪奇譚Ⅰ

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

tag: 小説 
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小説:妖・密事(あやかしみつじ)シリーズ更新!  

本日幻創文庫にて連載が更新されました!

奇譚×官能の連続短編小説「妖・密事(あやかしみつじ)シリーズ」です。

今回更新は『芒の海 後編』――ナロニック号の船魂、レディ・ウィンセルの情交が描かれております。

珍しく…全文エロじゃねぇか!って感じなので色々な意味で要注意です。(特に18歳未満の方は!)


『芒の海 後編』試し読み↓
 そうしてレディが向かったのは操舵室に程近い場所に位置する船長室であった。そこは彼女の為の部屋──牛飼い達を押しこめていた客室の三倍は広く、品の佳い応接間を思わせるような調度品が並び、この貨客船にこれ程快適な空間は他に無し。一目で特別と分かる。
 なるほど、己の部屋に籠もって虚穴坊の如く体を慰めるのだろうとの予想に反し、なんとなれば、ベッドには一人の男が全裸で寝そべっていた。その男、白い肌に碧眼の、ボサボサに伸びたブロンドの髪──どうやら英国人らしい。
 レディは彼の姿を認めると扉に鍵を掛け、服を脱ぎ散らかした。血筋さえ透き通るような裸体を晒し、大きな乳房をたわませてその男の隣へ──寝そべって曰く。
「やぁミスタータイラー、調子はどう?」

続き(本日更新作)はこちら→芒の海 後編

前回更新作はこちら→芒の海 中編

最初から読まれる方はこちら→芒の海 前編

シリーズ一覧はこちら→妖・密事シリーズ
(当作品は官能小説です♪18歳未満の方はご遠慮ください☆)


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Posted on 2016/03/16 Wed. 00:24 [edit]

category: 小説更新

thread: 更新報告・お知らせ - janre: 小説・文学

tag: 小説  官能小説 
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連載します(黒歴史を…)  

何年か前に書いた中編小説をブログで連載しようと思います!

完成作品なのでテンポ良く三日に一度は更新するつもりです。

しかし………

昔書いたものって読み直すと恥ずかしいもので…

しかも内容がなんというか……

『少女小説

なんじゃないだろうかと……

いやー黒歴史だわー完全に黒歴史だわー。アイタタタタ……

でも眠らせてお蔵入りさせておくのもなぁ………って感じなんです。(やっぱり読んでもらいたい欲はあるんですw)

そもそも文量も文体も中途半端な為に公募できず、ほったらかしていた奴なんですよね。

一応読んでもらう為に書いたものだし、ここは一つ、黒歴史だろうとなんだろうと晒してこそ売文家!(…たぶん)

というわけで本日は宣伝のみでございます。

『紅葉怪奇譚(もみじかいきたん)』近日公開(処刑)!!

改稿一切なし!(面倒だから)

どうぞよろしく!笑


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Posted on 2016/03/13 Sun. 22:48 [edit]

category: 未分類

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