夢月亭~下手の横好き~

夢月亭清修の小説&バス釣りブログ♪小説の更新情報・小説・釣行記録・その他諸々掲載してます★

河川 バス釣り~2018.05.25~26 ようやく春らしい!  

地元河川でのバス釣りです。
冬に豪雪だった所為なのか……もう5月も終わりかけと言うのに、これまでなかなか春を感じるようなスモールマウスに出会えていませんでした。
――が、ようやくシャローにバスたちが差しはじめたご様子です♪

土曜日にどう動こうかなぁ~と思案しつつ、25日金曜の夕方は仕事上がりの様子見釣行。
ソウルシャッド45SPで一本釣ることが出来ました^^↓
20180525s.jpg
おぉ、これなら明日は期待できそうじゃん!とテンションの上がる一本でした。
そしてこの日は貴重な魚にも遊んでもらえました↓
20180525yama.jpg
ソウルシャッドにまさかのヤマメww
随分とパーマークが薄かったので、ツイッターに「これってヤマメですよね?」と投稿したところ、やはりヤマメという回答を頂きました。(妖怪熊河童さん、ありがとうございました!)
降海型のヤマメで「ギンケ」と呼ばれているそうです。海で大型化して産卵期に朔上してくる、いわゆるサクラマスになる前の段階のヤマメがこれ。
調べてみたら降海型は海に向かう頃からどんどんパーマークが薄くなって、やがて銀色のサクラマスになる――おぉ、だから「銀化」なのか!超納得!!
釣り上げた時は「なんでこんなところにマスがっ!?」と吃驚しましたが、なるほど、こういうこともあるんですね。


そして期待十分で迎えた本日26日。
朝からウェーディングでポイントに入り、Drミノーを色んなスピードで巻き分けているとヒット↓
2018052645a.jpg
幸先の良い44㎝!ゆっくりボトム付近を巻いている時にヒットしました。
うわぁ……超嬉しい一本でした。何が嬉しいって「ようやく春だな!」って感覚が最高です。

立て続けにもう一本↓じゃあもうソウルシャッドでボトム擦っちゃうのはどうだろ? で、ゲット^^
2018052640.jpg
42㎝! 二本とも雄っぽくて、ベッドを作りにシャローへ差してきてる気がしました。
じゃあデカい雌はどこだ??ってことでビビビボムをあっちこっちへ見境なく投入↓
2018052645.jpg
45㎝! ヤバい! 超楽しい! でも、これも雄っぽい気が……

結局同じポイントではいかにもプリスポーンな雌は見つけられず、昼休憩をはさみ大きく場所移動。
ここのポイントは来週また試してみようと思いました。
ベッドが出来始めたら雌も差して来るのか……どうなのか……。普通に来週末にはスポーニング終わってサイズ下がりそうな気もしてます。笑

異動先はいかにもスポーニングな逆ワンド系のエリア。
かなりだらだらとシャローが続いているので、流木多いし根掛かり怖い……消極的にミノー(FLAT70F)で中層をチェック。
これに一投目からヒット↓
2018052641.jpg
41㎝! ボトムに当てないよう竿を立てて結構なスピードで巻いていましたが、引っ手繰るような良いバイトでした。
ファイト中も5連続ジャンプとかしたりして、元気の良さにビビりました。笑

さらに大きい魚を求めて、少しだけ釣りをズラしてみる試み↓
流れの強いところでミノーを速巻きしてみました。ら――
20180526gb.jpg
30㎝くらいかな……思い切りサイズダウン。笑
でも、流れの中にいた魚らしいミノーの食いっぷりはナイスです。

その後も色々試して歩き回りましたが、なんとサイズダウンが連発w徐々に小さい魚が釣れるようになっていくという悪化ぶりw
ただ単にズラせば良いってもんじゃない……色々狙ってズラしていく腕前はありゃしませんでした。

極め付け、最後の一匹は遂にスーパービッグかと思いきや、まさかのデカウグイ↓
20180526ugui.jpg
50UP?? いや、60あるかもです。笑
掛けた時はあれ?二ゴイかな? と思ったのですが、一瞬見えた口が二ゴイより大きかったのと、尾ヒレの形がバスに似ていたことから――まさかシーバス!?とかww勘違いからの有り得ないドキドキ感を一瞬だけ味わいました。笑

ウグイで何だかオチが付き、今日はこんへんにしよう、と四時納竿。
ようやくですが、春らしい楽しい一日でした。
20180526F.jpg
あ、そういえば一週間前の片倉釣行から使用しているコチラ↑新しく出た18フリームスLT。
今日は大活躍でじっくり性能を体感できました。
ずっと15フリームスを使い続けていた身からすると、「お値段そのまま」でこの軽さは本当にありがたいです。
悪くなった点も特に見当たらないし、使い続けてコンセプトであるタフさをより感じられれば最高ですね!


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Posted on 2018/05/26 Sat. 22:31 [edit]

category: 河川

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『36.心模様の断片』  

     36.心模様の断片――

 僕と秀喜の前に立っていたのは、白いポンチョのようなこの都市の民族衣装を着た一人の紳士だった。茶色の長髪をミクラさんと同じ形に編み込んであり、口髭を蓄えている。碧眼は優しげな光を湛えて僕達を見据え、敵意など微塵も感じさせることはない。
 僕はその男に尋ねた。
「貴方がヌン、なのですね?」
 男は首を横に振った。
「如何にも私はヌンだが、しかしこの姿が私自身ではない。私はプログラムだから、これは私を設計した人間の姿を借りているに過ぎないのだ。しかし、人の姿で君達と話しをしたいと思った」
 どうしてそんなことを? とは思わなかった。これは僕達と対話するうえで、ヌンが礼儀や敬意を表したいのだと、その目が語っているように思えたから。
 その目は僕と秀喜を交互に見て、溜息を吐くように微笑んだ。
「私は私の計画が万事上手くいっている世界を見続けて、新人類に確かな愛着を感じるようになっていた。嗚呼、私は間違っていなかったのだと、彼等の生活を覗く度にそう思った。やはり、人間は素晴らしい――助け合い、支え合い、信じるモノが善でありさえすれば、美しい心根で生きることができる。この都市を包んでいた芸術の素晴らしい事、君達も目にしただろう? 前世代ではあのような芸術さえ生まれることも無かったのだ。あれらの絵画に、新人類の心が映り込んでいると私は感じているよ。彼等は本当に素晴らしいと――そう想うのだ」
 今はその半分が失われてしまった都市の景観を懐かしむように、ヌンは真っ白な天を軽く仰いで瞳を閉じた。その瞼の裏に、今でも都市の美しさが残っているように。
 だが、やがて俯いて、ヌンは目を開いた。
「しかし、それも壊さねばならぬ……人も、この都市の者なら殺さねばならぬ――始めから決めていたことだ。仕方がない……。そう思うからこそ、私はできる限り人に係わるまいとしてきた。与える言葉は最小限に留め、この都市の統治も極力は民の自主性に預けてきた。それは、神としての威厳を保持するうえでも必要な事だったのだ」
 ところが、徹頭徹尾神であろうとしたヌンの前に現れた一人の少女が、その壁を容易く壊してしまった。少女の名はミクラ・ヌンディーネ。両親を亡くし、施設で生活する孤児だった。
 ヌンは少し照れくさそうに頬を掻き、僕から視線を外した。

「お父様――と、そう呼ばれた」

 長い間神よ、主よと呼び掛けられ、語られる名には畏れを含めて様が付随した。それはヌン自身もそうあるべきと思っていたし、当たり前のことだった。でも、不意に呼ばれたその響きに、ヌンは――

「暖かい――そう、思ってしまったのだ」

 その時のことを思い出しているのかもしれない。ヌンは僕達に背を向けて、再び真っ白な空を仰ぐようにしている。その背には確かな人間味があって、嗚呼、僕は彼に、確かな心を感じていた。
(ひょっとしてヌンは、人に憧れていたのかもしれない――)
 そんな風にさえ思った。
「始めは一方的に話すミクラの声を聞くだけで、声を掛ける勇気が湧かなかった。驚かれて、逃げられてしまったらどうしようなどと考えもしたし、私が滅多に話さない存在だからこそ、彼女はこうして話に来るのかもしれない――そんな風に思うこともあった。だからアレには参ったよ。勇気を振り絞って初めて声を掛けた時、大泣きされたのだ。どうしたら良いのか全く分からない――そんな経験は初めてだった」
 こちらから顔が見えなくても、そこにあるのは微笑みであろう――そう自然と想像してしまうようなヌンの声だ。僕と秀喜は、それを静かに聞いていた。
「ミクラと話せるようになって、私はどんどん彼女に惹かれていった。幼くとも、彼女には人として大切な優しさが備わっており、真面目で前向きな魂が、それを強く支えているのだと分かった。まだ十にも満たないのに、これは素晴らしいことだ。特別な子だと思った。学校や施設での様子をたくさん話してくれたが、自分が思うこと以上に、周囲の人の心を想像して語ることが多い子で、いつも誰かを気に掛けていた。ともすると、変わった子だったのかもしれない。そして親と云う信じるべき人がそばにいない分も、強く私の教えに縋っていたのかもしれない。ともあれ、そんな彼女が、強く、美しく成長していくのを見守れることが、私は嬉しかった」
 僕には、そう語るヌンの気持ちが少しだけ
分かるような気がしていた。
 彼女に出会った時、言葉を交わして直ぐに思ったことがある。嗚呼、この人に嘘はつけないな――と。
 普段から嘘を吐くようなことは滅多にない僕だけれど、それでもそう思わされたのだ。
 彼女が与えてくれる無条件の信頼は何にも代えがたいと直感し、それは、神々しくも居心地よく僕達を包んでいた。
 とてもじゃないが、この人を安易に悲しませるようなことはできないと思ったのだ。
 そして、彼女の強さは間違いなく本物だ。
 身を挺して民を守り――パニックになったこの都市にいて、この都市の民と、困窮する外の民を、彼女は非暴力のまま本気で救おうと考えていた。具体的な手立ては無い様子だったが、決して諦めてはいなかった。
 ヌンもきっと、そんな彼女という存在を誇らしく感じていたのだろうと想像する。この世界を創った者として、彼女の父として――。
ヌンは振り返り、真っ直ぐに僕を見た。
「青木祐介よ、君の言う通りなのだ。私にとって、ミクラは特別な存在になってしまっていた。それでも計画を推し進めるべきとして、揺れながら行動した結果が今のこの都市、そして、困窮する外の民達だ。私は最後の最後で失敗した。これ以上計画を元のまま進めることはできない。この大地に恵みを呼び起こし、私は後片付けをして消えようと思う。そして君達に頼みがある。どうか、その手伝いをしてもらえないだろうか――」
「――っ! ちょっと待て!」
 秀喜の直感がヌンの言葉を遮り、声を張り上げていた。
「あんた、なんか急いでいないか? それに消えるってどういうことだ!? ミクラはあんたのいる世界を望んでいるんだぞ!  まずはアイツにもう一度会って、話してやることが沢山あんだろうがッ!」
 ヌンは秀喜を見て、悲しげに微笑んだ。そして、首を横に振った。
「ありがとう、長嶋秀喜……君は筋の通った男だ。そして不義理を犯そうとする私をこうして諌めてくれた、優しい男だ。でも、しかし――」
 僕達を見るヌンの表情が真剣味を帯びる。最早譲ることはできないのだと、暗に示しているかのように。
「時は差し迫っているのだ。残念だが、ミクラと話してやれる時間は残されていない……」
 時が差し迫っている――とは、一体どういうことなのだろう? 僕と秀喜は顔を見合わせ、ヌンを説得したい気持ちにぐっとブレーキを掛けねばならなかった。

                       ≪――続く≫
前話→35.世界の変遷VR3    次話→(5月30日更新予定)


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Posted on 2018/05/23 Wed. 21:40 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

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片倉ダム バス釣り~2018.05.19 ミス多発……スッキリしない数釣り。笑  

20180519.jpg
2018.05.19(土)に友人A&Iと片倉ダムに行ってきました!

昨年の同時期に体験した人生初の片倉ダムは、とにかく表層に好反応でめちゃくちゃ楽しかったんですよね。

あれをもう一度味わいたい!そんな気持ちで遠征してきました。が――

生憎朝から強風、そして雨の濁りが入っていてどうも昨年とは違う雰囲気……ボイルも全然見えません。

なので、朝一はアフター回復系の低気圧パワーに期待してスピナベをチョイスしました。

開始10分くらいでいきなりドンっ!という良いバイトを得ましたが、なんとこの魚をハンドランディングしようとしたらトレーラーフックが指にグサリッΣ(´Д`lll)エエ!!

大事には至りませんでしたが、折角のモーニングバイトを痛がっている間にバラシてしまいました……><;

やっぱりネットが無難だなぁ……と思わざるを得ないですね……

でも大丈夫、スピナベで連発だ!と意気込んでみましたが、ボートを流していくと巻物にアドバンテージのありそうな地形なかなか続きません。

で、レッグワームやHPシャッドテールのダウンショットを投げてみたら、これがまぁ良く釣れるんですわ^^
20180519kata.jpg
レイダウンや浮きゴミが絡んだ場所では直リグも投入。これもやはり小さいワームが好反応でした。

上流方面で友人Aがフローティングフリックで釣っているのをみて、以外と表層付近もイケるのか? と思い試したガストネードでも一匹ゲット^^本日最少サイズながら、ジュボッという出方が素敵で嬉しかった♪

昼過ぎからはサイズUPを狙ってビッグベイト、クランクベイト、メタルワサビ―を試しましたが、ビッグベイトにチェイスがあるのみ。

夕マヅメはクランクに集中することにして、立ち木にぶつけてみたり、シャローのボトムにこすり付けてみたり、あっちこっち投げまくってました。

で――最後の最後にクランクで待望のビッグバイトが!!とはならずwレギュラーサイズのバイトを得ました。笑

そして、なんとこれを足元でバラシ……敢え無くタイムアップ。

最後の最後に朝と同じミスを繰り返してしまったようで、なんだか今日は全然釣れた気がしませんでした。笑

サイズも出ませんでしたしね。

ちなみにボート屋情報に寄れば、この日のビッグサイズは朝、雨が降っている間にジョイントゾーイなどで釣れていた様子です。

デカい奴はデカいエサ食ってるってことなんでしょうね~きっと。

よし、次は自分もギル系ビッグベイトを用意して行こうと思います。(いつになるかは分かりませんが……)
20180519saru.jpg
千葉のこのエリアって猿が全然珍しくないですよね。

めっちゃアクロバットに動き回ってました。


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Posted on 2018/05/21 Mon. 21:44 [edit]

category: ときどき千葉遠征

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『35.世界の変遷VR3』  

     35.世界の変遷VR3――

 ヌンの内側で、ヌンの指示通りに動いていたのは人ではない。やはり、自動兵士同様の黒いコードの束――ロボットだった。彼等を構成するコードは彼等の神経となり、時に筋肉となり、あらゆる技能を発揮することができた。ゆえに自動兵士として活動する個体もあれば、見栄えは同じでも、施設に閉じこもって遺伝子操作を施した人間の製造に従事している個体もいたのだ。
 今、僕には当時のヌンの内側が見えている。薄暗い空間にいくつもの大型カプセルが緑色の液体を湛え、ぼんやりと光を放ち、その内側で裸の人間を促成栽培しているようだ。
 多くは胎児の形をしているが、中には成人の男女の姿も見える。
 これがヌンの語る新人類――そしておそらくは、この世界で僕達三人が目にしてきた、赤レンガの都市に住まう、そしてヌンに住まう人々の遠い祖先なのだろう。
 カプセルは僕達も一度入った、あの治癒装置とどこか似通っていた。
 そしてカプセルの隙間を縫うようにして、件のロボット達は休むことなく働いている。その光景に、僕は言いようの無い空恐ろしさを感じていた。そして――

――準備は滞りなく、やがて、前世代の人類は滅びた。私が、洗い流したのだ。そして、千年の復興計画が始まった――

 ヌンは大陸の環境をできる限り守りながらも、三国の掃討に成功してしまった。砂漠はまたその存在を肥大化させはしたが、そこは千年の時を経て直せばよいと、そう考えていたのだろう。

 そうして、ヌンは動き始めた。百足のような細かな足を生やしたり、巨大なキャタピラを駆使したり、様々な足を使って旅を開始した。

 まず手始めに、ヌンは人の暮らせる限られた土地に再びロボットを放ち、今度は彼等に、戦争ではなく復興の為の任務を与えた。

――まずは新人類の、第一世代を住まわせる環境作りをした。第一世代は私にとって半人類と言える。お前たちの仲間であるニナ・キューブリックと同じように、脳内にプログラムを持つことができ、そこには私の意志を宿していた。ゆえに半人類。彼等は疑問を持つことなく、整えられ、与えられた環境に住みついた。そして次の世代を育て、教育し、第二世代に信仰と規律の下地を与えたのだ――

 ヌンはニナの名を引合いに出し、そう語った。どうやら彼女がヌンにアクセスした際、ほんの短時間の逆探知で、僕達三人の情報は洩れてしまっていたようだった。

――そしてこの第二世代からが私にとっては人類である。私の意志を埋め込むことなく、しかし信仰によって私と繋がる、私の望んだ人類の始まりだった――

 ヌンは貿易を開始し、それと同時に、信仰をより強固なものにするべく使者を遣わした。同時に法律を整え、当に今、この世界を構成している要素の、その原型を形作っていったのだった。

――長い旅の始まりだった。私はこれらの活動と並行して、砂漠を蘇らせる計画を進めていった。そしてそう、青木祐介よ――お前の考察は大したものだ。私は貿易を独占する意味でも、砂漠を蘇らせる意味でも、件のキメラを用いたのだ。キメラは深い地中から土を持ち上げ、砂と混ぜ、そこで己の屍を有機物の基礎とするのが役割だ。彼等には有機物を集めようとする本能があるゆえ、人を襲ったりもする。寿命は短いゆえに、私は今でも大量の彼等をストックし続けていた。君達が目撃したのはそれだ――

 僕達の地下探索は、どうやらニナが逆探知を受けた瞬間から、ヌンには筒抜けだったらしい。ならばどうして僕達を排除しなかったのだろう? ヌンならばそんなことは容易いはずだ。何をするか分からない異世界人など、計画の敵と見なされてもおかしくはないだろうに――。
 そんな僕の思考を、やはりヌンは拾い上げて語った。

――ニナ・キューブリックはその時まだミクラと出会っていなかった。が、君達二人の説明を受け、予備知識としてその名が彼女の中にもあった。君達が排除されれば、ミクラが悲しむことは理解していたのだ。私の計画の大詰めが、随分とミクラの心を苦しめていて、君達はそんなあの子の支えになろうとしていた。ゆえに見守ることを選んだのだ。嗚呼、そしてその選択は、どうあがいても私があの子を殺せないのだと、私に悟らせた――

 心なしか、ヌンの声に翳りを感じた。

――私はただ、己が役割をより有意義なものにする為だけに世界を形作ってきた。命を生み出し、教育し、貿易を司り、宗教を作り、キメラを放ち、神のふりをし続けてきた。今だからこそ、その結果は上々と言える。人々は清く正しく、怨みを抱えずに生きている。そしてこれからは、大自然の恩恵を受け、行き過ぎた科学の無い、より安らかな生活を手に入れるだろう。しかしだ、ここまで順調に推し進めてきた計画に、一つだけ、大きな誤算があった――

 嗚呼、きっとミクラさんのことだろう――僕がそう思うと、宙に浮くようだった視界と体感が地に戻され、映像が霞んでいく。恐らく、世界の変遷は今に至ったのだ。
 そうして消えてゆく映像の向こう側に広がったのは、始めと同じ真っ白で広大な空間だ。そこには僕と秀喜、そして、もう一人がいた――。

                  ≪――続く≫
前話→34.世界の変遷VR2    次話→(5月23日更新予定)


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Posted on 2018/05/16 Wed. 21:54 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『34.世界の変遷VR2』  

     34.世界の変遷VR2――

 否、人々にとって、戦う理由は常にそこにあった。それは食料問題よりも切実で、必要な物資よりも重たく心の中に存在していたのだ。

 怨み――である。

 互いに互いの人民を殺し合った怨み、憎しみは、最早取り返しのつかない段階にまで膨れ上がっていた。
 国は栄えては滅びを繰り返していたし、新国家設立、合併、独立等々、様々な紆余曲折の流れの果てに三国が残ったけれども、怨みが浄化されるタイミングはついぞ無かった。それは世代が変わろうとも教育により受け継がれ――人々は、他国に対して強い怨みの感情を抱いたまま、冷戦の時代を生き続けていたのである。
 そして同じ感情を敵国も持ち合わせていること周知の事実で、ならば牙を研がねばならない。殺される前に殺さなければならない。そんな強迫観念さえ蔓延しているかの有様だったのである。

 冷戦は長く続き、それは仮初の平和とも呼べる時間だった。その時間の中で、僕はある一国の片隅に、見知った都市を発見する。
 嗚呼、あれは――
 僕の思考に呼応したのか、また、男の声が聞こえた。

――そう、それが私だ――

 巨大な城塞都市――否、今は石造りの古風な城壁と街並みで、それが覆うようにカモフラージュされているのだと分かる。その姿なら確かに城塞都市と呼ぶのが如何にも相応しく思えるが、今僕が見ている過去の景色、当時の都市の姿は違っていた。白く、艶やかな壁をそそり立たせており、今と変わらないのは天を覆う透明なドームと、中央にそびえ立つ巫女の聖堂だけ――なるほど、こうして本来の姿を見ると、その役割がシェルターなのだと気付く。
 有事の際、人々が逃げ込む為のシェルター都市――それが当時のヌンだった。

――そうだ、私は最後の大戦争から、人々を守る為の都市だった。そして有事の中で人々を適切に導くよう開発された、都市の中での政治権を持つAIだった。私は歴史、政治、法律、医療、最先端軍事学……膨大かつ様々なデータを学びながら、私はその時を待っていた――

 ヌンは待っていた。最後の大戦争が起こるその時を。その時こそ、己が己たる役割を全うできる機会ゆえに。でも――

――しかし、私は学びの中で気付いたのだ。最後の大戦争の末に人類が生き残ることは、不可能だと。発達し過ぎた各国の軍事力は、ぶつかり合えば大陸が壊れかねない程の脅威にまでなっていた……。よしんば大地が残ったとしても、そこは放射能の世界――人類の生存できる環境は、片隅にも残らない。嗚呼、そうだ――己がシェルターとしての役割を全うできるかどうかも、本当は怪しかった――

 彼が語るには、己というシェルターが大戦争を凌ぎ、後の世界に残れる可能性は低かったそうだ。そうであるなら、やはり人類の生存など夢物語に等しく、開戦は、間違いなく世界の終焉の始まりだった。
 そしてその結果が分かっていても、始まってしまえば人の手に戦争を止めることは不可能だと、ヌンは語った。

――走り出した怨みは際限を知らない。結果が見えていても、人々は報復に次ぐ報復を繰り返したことだろう。だから私は思ったのだ。終焉の始まりを、未然に食い止めなければならない。そして、人々の怨みを流し、新人類に次の世界を残さねばならないと――
 ヌンは僕の思考から引用し、ノアの方舟を引き合いに出した。

――私は人の為に生まれ、人の役に立つ存在でなければならなかった。だが、先の見えた人類の役に立ったところで、それが何になると云うのだろう。私に逃げ込んだ人々と共に、過去の怨みを乗せることが、私は嫌で嫌で仕方が無かったのだ――。私は、未来を託すことのできる人、怨みを知らない純粋な人の役に立ちたかったのだ。だからそう、私は密かに計画を練り、過去の世界、怨みで塗潰された世界を洗い流し、心正しきノアと動物達を乗せる方舟になろうと思った。動物達は作ればよい。人もまた然り――

 そして世界は戦争を始めようとしていた。切欠は一国の軍事施設が事故を起こし、細菌兵器を漏洩させてしまったことだった。
 自国の民に被害がでた責任を逃れる為、時の指導者は他国による攻撃であると嘯き、世論を積極的な交戦へと煽ったのだ。
 その国で出撃の準備が開始される。その情報は他の二国にも伝わって、いよいよ開戦の緊迫感が世界には満ち満ちていた。
 そんな時に――
 突如として各国にミサイルの雨が降り注いだ。それと同時に、黒いコードの束で構成された、最新鋭の自動兵士達がいたる所に湧き出し、人々の営みを蹂躙し始めたのである。
 あれは――

――そうだ、お前たちもこの都市で見たであろう、悪魔と言われている私の自動兵士達だ――

 では、あのミサイルの雨も――

――無論、私が放った。シェルターは有事まで人の立ち入りを禁じ、全ての消耗を避けて保存されていたのを逆手に取り、秘密裏に私が私の内側に用意していた。私は、突如現れた第四勢力となり、三国の横っ面を叩いたのだ――

 ヌンの攻撃は完全に虚を突き、各国の軍事力を大きく削いだ。その優勢を利用し、間髪入れずに自動兵士たちが白兵戦を繰り広げる。見る見るうちに、人の世界は力を失っていった。

――異世界の旅人よ、お前は私に言った。なぜ人の可能性を信じないのか、と。違うのだ――私は人の可能性を信じている。人の素晴らしさを知っている。この世界でだって、もし人の寿命が二十年も短ければ……もし文明発生の当初から一夫一婦制が尊ばれていれば……食糧問題が発生しなければ……そう思ったからこそ、私はこの世界を洗い流す決断を下した。そしてお前たちの物語で云うノアなる存在となったのは、私が丹念に組み替えた遺伝子より生み出した、全く新しい人類なのだ――

                   ≪――続く≫
前話→33.世界の変遷VR1    次話→35.世界の変遷VR3


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Posted on 2018/05/09 Wed. 22:46 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

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ルアーライフマガジンに掲載です!  

ルアーライフマガジン
GWに浮かれてすっかり報告を忘れていましたが、4月の相模湖釣行の様子がルアーライフマガジンさんに掲載されています^^

スポーニング直前!春の相模湖釣行!

よかったら遊びに来てください♪↑↑


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Posted on 2018/05/08 Tue. 22:45 [edit]

category: 寄稿記事

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相模湖 バス釣り~2018.05.03 雨のGWは最高♪(翌日の初多摩川釣行併載です)  

20180503(51).jpg
ゴールデンウィークなので相模湖行ってきました♪

朝一の開始五分でまさかの自己記録更新をゲットです^^↑↑

出船して直ぐ近くのオダで釣れたので、ボート屋社長が気づいて計量、写真撮影までしてくれました。

51㎝、2360g………開始早々大満足してしまいました。笑

―――タックル―――
ロッド:DAIWA BLACK LABEL+661MLFB
リール:DAIWA SS AIR 8.1R
ライン:R18BASS Fluoro10lb
ルアー:O.S.P JIG ZERO FOUR SYNCHRO1.8g+DoliveShrimp3in(カットし使用)
――――――――――

きっと昨夜から降り続いていた雨のおかげですね♪凄く嬉しい一本でした。

しっかりフッキングして、スモラバもしっかり上顎に掛かっていたので割と安心のファイトが出来たのですが、上げてみたら貫通はしてないんですよね。外すのも簡単。

でもベイトフィネスタックルでこれ以上強くフッキングするのは竿が心配だし……針ももっと大きくて強くなくちゃだし……と、デカい魚に焦点を絞るなら、やはり強いタックルに分があることをシミジミ感じた気がします。太いラインで、強い竿と針で、どうしたらバスが騙せるのか……もっと意識していこうと思いました。


――で、満足しつつもまだまだ時間はたっぷり、10時間以上あるわけです。笑

この日は桂川を登って下るプラン。雨が降っている間はソウルシャッドでもコバスが楽しめましたが、期待していた程には降り続いてくれず……二時間足らずで真夏のような日差しに攻められることに……。

晴れた途端に魚の反応も顕著に変わり、巻物は無。なので、残り8時間はのんびり、シャローカバー打ち&シャロー付近の一段下探りの旅となりました。
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シャロー付近、ちっちゃな岬からネコリグを転がして32㎝をゲット↑↑
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同船していた友人もカバー際から丁寧にネコリグをボトムトレースし42㎝をゲット↑↑
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木陰で昼寝を挟む↑↑この時期の木陰は最高に気持ち良いのですが、たまに芋虫が落ちてきます。笑
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秋山川の入り口にある中州周りはカバーだらけなのでドライブビーバーの3.5gライトテキサスで↑↑
40㎝をゲット^^

「また雨ふらないかなぁ……」とか、日差しに文句垂れつつ釣りしてた割には、こうして振り返ると満喫してますね。笑

夕マヅメにはクランクベイトも投入しましたが、やはり巻物には無でした><;


そして翌日は友人の案内で人生初の多摩川釣行へ!

日差しは相模湖よりも暑いし、しかも思い切りアフタースポーンの雰囲気とあって一見さんの自分にはかなり難しそうな気がしました。

取り敢えず時々ボイルも見えるしってことで、7㎝サイズのミノーを速巻きしていると↓
20180504(na).jpg
なかなか立派なナマズが遊んでくれました^^

ナマズ、実は食ったら美味しいらしく……ちょっとお値段するみたいですが、いつかナマズ料理で有名な料亭には足を運んでみたいと思っています。埼玉県吉川市にあるのかな? いつか必ず……!

しかしこう歩き回ってみると、多摩川ってバス釣りしている人すっごい多いんですね。メジャーフィールドなんだなぁと思いました。

観察してみると、日中は流れの中に何かを流してじっとしている人がポロポロ釣果を上げていて、これは真似せねばと思い即実行。

「流れてくる川虫とか食べてるのかもねぇ」と友人が言うので、ドライブシュリンプ3inのスプリットショットリグを流れに乗せてみました。で――↓↓
20180504(31).jpg
どうにか一本^^新参者にも心優しいバスがいてくれたようです。笑

さすがに二日連続の早起きには疲労困憊でした……強風にも辟易したので、この日はこの一本で早上がり!

仮眠を取って新潟に帰りました^^


二日間も釣り三昧したら、さすがに翌日は仕事ですっていうのが今までの感覚なのですが――いやいや、すごい……これがゴールデンウィークか……体を癒す時間が十分に取れるっ!!

土日休みの仕事に転職して良かったと、こんな時は心から思いますね。笑


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Posted on 2018/05/05 Sat. 15:00 [edit]

category: 相模湖

thread: ルアーフィッシング - janre: 趣味・実用

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『33.世界の変遷VR1』  

     33.世界の変遷VR1――

 体中を蠢くコードが押し包んで、視界は真っ暗になった。全身を這うようなコードの気味悪さに恐怖を感じ、半狂乱になって手足をバタつかせ、どうにか逃げようとしたけれど、駄目だった。
 こんなことになるのなら、もっとヌンの正体を明かしてから接近するべきだったと頭の隅で思う。思いながら、やがて全身の力が抜けてゆくのを感じた。
 しかし気が付くと、僕はどこまでも白く、どこまでも広い空間に秀喜と立っていた。彼と疑問符で埋め尽くされたような表情を突き合わせて、もう一度辺りを窺うが何も無い。五感もぼんやりと緩んだような気がしていて、現実味がどこかへ消え去っている。
「ここは、一体……」
 呟くと、突然情景が切り替わった。空白の空間が一瞬にして色彩豊かになり、そこはまるで水彩画の森の中――子供の頃にイメージした、お伽噺の世界のようと僕は思った。
 そしてその景色がぐっと下へ降りてゆく。いや、重力から解放されて、僕と秀喜がまるで空に飛ばされたような感覚だ。そうして俯瞰したのは、水彩画の世界、水彩画で描かれた、唯一つの大大陸。
 おそらくは僕達が旅したこの世界の、遙か昔の姿なのだと思った。その大陸には、砂漠など欠片も見えなかったのだから。
 そうして、声が聞こえた。落ち着きのある、低い、男性の声だ。

――異世界の旅人よ、見てくれ、この世界と、この世界の変遷を――

 驚くべき速さで、目の前の世界は時間を重ねてゆく。それでいて不思議なことに、膨大な情報が脳に送られてくるような感覚の中で、僕達は大陸内の見たいと思う場所へ意識を飛ばすことができ、見たい時間は見たい速度で見ることができた。緻密な水彩画のアニメーションが、この世界の過去を、いかなる角度からも再現してくれる。まるで神の視点で、この世界の記憶を覗いているような気がしたのだった。

 森林からもくもくと立ち上る煙に目を遣ると、遙か昔の人々は熱帯雨林に火を放っていた。これは――焼畑農業だ。森林を焼くことで土壌改良と雑草、害虫駆除を一辺に行い、そこを農地とする農法である。
 熱帯雨林の懐は広く、俯瞰すれば人のもたらす火など火の粉に過ぎず、その生活様式を受け入れて余りある広大さを誇る。
 人々は数年に一度農耕地を変え、そのタイミングで焼畑を行った。土地に休閑期間を設け、植生遷移を促すのも僕の知る焼畑農業と変わらない。
 そうして徐々に広がってゆく農耕地は、やがて集落へ、集落から町へと移り変わってゆく。
その規模が国と呼べるようになる頃に、焼畑の習慣は無くなった様子だった。施肥により、同じ農耕地を使い続けるようになったのだ。そして国同士は運河を用いて交易を結ぶようになり、世界は、確かに豊かな一時代を築き始めていた。

 しかしだ、少し時間が経つと農耕地は再び広がりを見せ始めた。それは数多ある国々の領土が、隙間なく接近する程に――。
 これはどうしたことかと意識をとある国へ傾けると、人口が爆発的に増えていた。農地を広げなければ、食料が追い付かなくなっていたのである。
 その原因は一夫多妻制と、この世界の人々の寿命が僕や秀喜の知る人の平均に比べ、二十年程長いことにあるようだった。
 どこの国も似たような状況で、農地が近接し始めると人々は争うようになった。自国の食糧問題を解決するには土地が必要不可欠なのである。
 いたる所で、戦火が上がった。
 ある国は隣国を滅ぼし束の間栄えたが、しかしまた違う隣国同士の連合軍と対峙することになった。勝利を収めた連合軍は後に土地の分配を巡って内紛を起こし、そのタイミングでまた別の国に横っ面を殴られる形になった。
 戦火は収まらない――ありとあらゆる事柄に兵権が幅を利かせ、土地を巡る戦いはその内側にも権力抗争という争いの構図を孕んでいる。
 裏切り、計略が絡み合い、その末に手にした権力も土地もまた別の誰かにつけ狙われ、嗚呼、その繰り返し――戦火は収まらない。
 そんな戦いばかりが目に付く世界情勢の中で、確実に進歩を見せたのが科学だった。始めは槍と火弓の戦いだったはずが、いつしか銃と爆薬に置き換わっていた。そうして戦力にも資源が必要となれば、戦いの目的は何も土地だけに限られず、ありとあらゆる物を手にする為に戦争は行われた。
 鉄を制する国が時代を制すると謳われて、資源国は数多の国から略奪の対象とされた時代もあり、実際、資源を手にした国は強く、その後も長期にわたって存在し続けた。
 しかし一つの強大な国が生まれれば恐れを生み、恐れは他の国々を結び付け、一大連合軍の形を取って戦争は起きた。連合軍が勝てばまた利権や土地の分配を巡り別の戦争が起き、強国が勝っても疲弊したところをまた別の国が叩きにやって来る。
 繰り返し殺され、繰り返し奪われ、見るに堪えない血が流れ続けた。
 水彩画の世界は、炎と血液で真っ赤だった。それでも、戦火は収まらない――。
 気が付けばもう、熱帯雨林など見る影も無くなっており、国境では砂漠がその存在を拡大し始めていたのだ。

 ここから水彩画の世界には、徐々にだが実際の映像と思われる動画が混ざり始める――。

 繰り返される戦争の中で、科学の発展は驚く程目覚ましかった。およそ人には在り得ない時間の流れをこうして俯瞰してみると、その進歩は唐突に、爆発的で、目まぐるしく世界の景観を一変させたのだ。
 あの緑豊かだった大地は、今やサイエンスフィクションの世界然として夜に煌めき、幾何学的な大都市、大国家が、今や大地の三分の一を占める砂漠を中心に、三竦みの均衡状態を保つようになっていた。
 冷戦の時代、そして、情報戦争の時代である――。
 この段になると、当初戦争の切欠であった食糧問題などは人々の脳裏から消え去っていた。人口は依然として増え続けていたが、発展した科学が非常に効率的な栄養素採取を可能にしており、合成食料品なるものが数多く出回っていたのだ。食糧問題ですら、既に科学が解決していたのである。
 しかし三国は、いつか敵国を滅ぼし、世界唯一の国家になるべくそれぞれに牙を研ぎ続けていた。
 核兵器を凌ぐ、より強大な弾頭の研究に力を入れ、細菌兵器を考案し、より解読困難なコンピューターウィルスを作り、常に敵の情報を入手し続け、やり合った後にただ己の国だけが立ち上がれるタイミングはいつか、今かと待ち望んでいたのだ。
 嗚呼、それは一体なぜなのか――最早戦う理由など、そこには在りもしないのに。

                        ≪――続く≫
前話→32.乱暴な訴え方    次話→34.世界の変遷VR2


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Posted on 2018/05/02 Wed. 00:37 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

thread: 自作小説 - janre: 小説・文学

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2018.04.21記録的真夏日の相模湖釣行  

20180421,4
2018.04.21(土)にめちゃくちゃ久しぶりの相模湖釣行でした!

四月にもかかわらず記録的な真夏日で、おまけにミッドスポーン直前の雰囲気。

シャローのバスたちもナーバスで、妄想していたより全然チョロくなかったです。笑

でも、まぁまぁ自分のセオリーどおりやって楽しめたので遠征して良かったと思います^^
20180421,1
マックスサイズは国道下で42㎝でした↓
20180421,3
釣りの詳細は後日ルアーライフマガジンにて掲載予定です♪

UPされたら再びご報告させていただきます!


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Posted on 2018/04/27 Fri. 23:19 [edit]

category: 相模湖

thread: ルアーフィッシング - janre: 趣味・実用

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『32.乱暴な訴え方』  

     32.乱暴な訴え方――

 ミクラさんはニナとの会話の後で直ぐに眠ってしまったので、僕達と夕食を共にすることは無かった。
 その眠りは深く、脳が深い絶望を和らげようとしているのだと願うより他にない。さらに願うなら、ニナの言葉が彼女の心に健やかな影響を与えてくれるようにと僕は祈った。
 そう、祈った――一体何に?
 もちろんヌンじゃない。僕は信仰を持ち合わせていないから、こんな時はいつも物語の神に祈っているのだと思う。
 もしそのような神があるのなら、彼女に救いのある展開と結末を――と。
 そうして、僕と秀喜はこの世界の神を徹底的になじってやることを心に決めた。想いの丈を、徹底的にぶつけるのだ。
 その為に、翌朝巫女の聖堂を訪れた。ミクラさんが蹲っていた件の部屋――その扉に手を掛けると、鍵穴など無いのに今日は開かない。ヌンが意図的に閉ざしているのだろう。
 秀喜が、その扉を乱暴に蹴りつけて叫んだ。
「こぉらぁッ! 糞親父ッ! てめぇ一体どういうつもりだッ!」
 僕も同じく蹴りつけて、思い切り叫んだ。
「ふざけるなッ! 神なら人を弄んでも良いと言うのかッ!? 彼女がどんな気持ちでアンタを慕っていたか――彼女の成長を見続けてきたアンタなら、絶対に分かるはずだッ!」
 蹴っては叫び、蹴っては叫び――僕達は延々とそれを繰り返した。
「気に入らねぇッ! 他にやりようはいくらでもあんだろうがッ!」
「その通りだッ! アンタが僕達の話に応じないのなら! 神だろうとなんだろうと僕達は戦うぞッ!」
 蹴って、叫んで、繰り返して――この声は必ずヌンに届いているはずだ。なぜなら、それは幼い日のミクラさんが証明している。
 だからこんな行動に出ているのだと云えば、まだまだ僕達も冷静に行動しているように受け取られるかもしれない。が、実際は見たままである。ただ感情的になっていたのだ。感情を、剥き出しにしていた。
 それもこれも、昨晩の話を聞いてヌンの印象が大きく変化していたからだろう。ぼんやりと神様というイメージだったヌンには、今や『心』の存在を確かに感じていた。
 ヌンは彼女に「ありがとう」と言った。
 喜びを分かち合い、悩みを聞いた。
 彼女を導く為か、怒ることもあったと――。
 最近でも、昔のように話がしたい、と――。
 ならばやはりそう、感情的にならずにはいられない。
 心にこそ、僕達人間は想いをぶつけられる。心にこそ、僕達人間は訴えかけたい。
 だからこそ乱暴に蹴ってでも、叫んででも、ヌンに僕達と云う存在を強く認識させたかった。
 三十分程そうして暴れていると、痺れを切らした秀喜が遂には懐からコルトガバメントを抜出し、扉に向かって構えようとした。
 いや、さすがにそれは弾の無駄と云うか、跳弾が危ないんじゃ……と僕は思ったけれど、しかし、次の瞬間――
 カチャリ――という何とも呆気ない音を立てて、扉がゆっくりと開いたのだ。
 まさか拳銃の脅しに屈したわけでもあるまい――奥に広がる暗闇の中に、あの緑色の血管のような、どこか意識を宿すような光が怪しく浮かび上がっている。
 闇に紛れ、兵士の形をしていた黒いコード達が微かに蠢いているような気もする。
 これは、罠?
 違和感たっぷりの歓迎を不気味に感じたが、でも、ここで引くつもりは毛頭ない。僕もコルトガバメントを抜いて、秀喜と二人で中に足を踏み入れた。
 そして辺りを見回したが、何も起こらない。
 正面に銃を構え、僕は言った。
「ヌン、お前は間違っている。自分に嘘を吐いている」
 目の前にヌンの心があるのだと信じて、訴えた。
「この砂漠の大地をキメラとお前自身の力で蘇らせ、生態系豊かな熱帯雨林に代えるんだろう? そしてオーパーツは姿を消し、この世界に非暴力と非科学の時代がやってくる。その為に、長い時間を掛けて強固な統一宗教までお前は作ったんだ。その目的は間もなく完成しようとしている。でも――」
 僕は構えていた銃を降ろしていた。
「本当は迷っているんだろう? たった一人の女性の為に、お前は踏み切れないでいる」
 ミクラさんを想った。彼女の笑顔を、彼女の泣き顔を、そして、僕達の盾になって両手を広げていた、その背中を――。
「そうさ、本当は、容易いことのはずだ。この巨大な都市そのものを消し去ろうとしているお前にとって、上澄みの街や人々を消すことなんて、いつだってできるはずじゃないか。それをわざわざ悪魔に委ね、銃を持たせ、少しずつ行うなんておかしな話だ。きっと、お前はきっと――」
 僕は僕の想像が正しいことを強く祈った。こればかりは物語の神にではない。ヌンに祈っていた。そうであってほしい――この神は、ミクラさんだけは心から愛していたのだと信じたかったのだ。そうでなければ僕達の言葉など虚しく部屋に木霊すだけだし、ミクラさんの心も救えない。
 どうか僕達の言葉が、響く『心』であってくれと強く念じていた。
「自分を試していたんだろう? 目的の為に、己は彼女を殺せるのか、引き金を引けるのか、少しずつ街を壊しながら確かめようとしていたんじゃないのか? 本当は、彼女を殺す自信が持てなかったんじゃないのか?」
 ミクラさんは言っていた。ヌンの加護があって、自分は民の盾になれるのだと。僕はその事実をノアの方舟と結び付けて考えてみたけれど、これはある意味、彼女の方が正しかったのだ。
「その結果はもう出ているよな? お前は彼女を撃てなかった。彼女を殺せなかった。それも一度じゃない。何度試しても駄目だった。彼女を……愛しているから――」
 気が付けば拳を固く握り、声にも自然と力が入っていた。
「ヌンよ、お前は人を愛せる存在だ! 人の為にこの世界を造り替えようとして、人の為に踏み切れないでいる! そんなお前がなぜ! 人の可能性を信じてやれないんだ! なぜ自分が育てた人々の優しさを疑うんだ! 洗い流す必要なんかない! ただ信じて、世界を人に委ねることだって選べるじゃないか! もっと信じてやれよ! アンタの娘は、アンタに代って世界を導けるくらい、膨大な可能性に満ちているぞッ! 彼女は神の子なんだ! 間違いなく! アンタの娘なんだよ!」
 そう言い放った、次の瞬間だった――。
 一体どうしてこれ程と思うような大量のコードが、部屋の暗がりから湧きだして僕と秀喜を押し包んだ。
 コードは悪魔を構成していたそれと同じく蠢いており、部屋の中は、最早隙間なくコードに満たされたのだった。

                      ≪――続く≫
前話→31.彼女の父親    次話→33.世界の変遷VR1


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Posted on 2018/04/18 Wed. 21:00 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『31.彼女の父親』  

     31.彼女の父親――

 出来上がった料理をミクラさんの部屋に持っていくと、換気の為か扉がわずかに開いており、そこから仄かな灯りと話し声が漏れていた。ニナとミクラさんの会話だ。
 嗚呼、彼女は目を覚ましてくれたのだと僕は嬉しくなり、直ぐにでも扉をノックして中に入ろうとした――が、どうにも聞こえてくる声が秘密を囁き合うような、どこか湿り気を帯びるような声だったので、つい息を潜め、耳をそばだててしまう。盗み聞きなど下品とは思いつつ、しかし、どうしても気になってしまったのだった。
「ニナ、私ね――」
「うん」
 ミクラさんとニナの声の位置が近い。ニナの声はどこか語り下ろすようで、僕はニナに膝枕されるミクラさんを想像した。
「私ね、孤児だったの。生まれてすぐ、両親が事故で亡くなっちゃって、施設で育ったわ。満ち足りた施設よ……何一つ不自由なく、同じ境遇の仲間と明るく過ごしていたわ……。でも、やっぱり両親のいる子が羨ましかったり、眩しく見えたりした。どうして私には両親がいないのだろうって、悲しくなることもあったの」
 衣擦れの音が微かして、ニナが、ミクラさんの頭を撫でたように思う。
「そう……私と同じなのね。私も施設育ちだから、ミクラのことが他人のように思えないのかもしれない」
「そう、ニナもそうなんだ……」
 何か感じ入るような間を置いて、再びミクラさんが語り出した。
「それでね、寂しくなって時々泣いてしまう私に、施設の保護官は優しかったわ。温かく抱きしめてくれて、私をお母さんだと思っても良いのよって言ってくれて――すごく、嬉しかったの。その時の私、どうしてかしら……それだけでも十分嬉しいのに、きっと我儘だったのかしら――じゃあお父さんは? って聞いたの。そうしたらこんな答えが返って来た。ヌン様がこの都市に住まう民の、全ての父ですよって。嗚呼、そうか、そうなんだって、心から納得できた。誰もがヌン様を尊敬し、心から敬っていたもの。私の父親は神様なんだって、何だか誇らしい気持ちにもなった」
「………」
 きっとニナはミクラさんの頭を撫でながら、静かに耳を傾けている。
「それから私、いつも学校の帰りに聖堂に立ち寄ったわ。父と、話がしたかったの。その日あったこととか、他愛も無いことを話したかった。悩み事があれば聞いて欲しくて、嬉しいことがあれば一緒に喜んで欲しかった。だから毎日通って、巫女だけが入れるあの扉の前で――声が返ってこないのは分かっていたけれど、いつかお話しできる日が来るかもしれないと思って、喋りつづけたの。そうしたら――」
「………」
「ある日ね、扉の向こうから声が聞こえたわ。お入りなさい――って、優しい、安心できるような男の人の声。信じられなかった。でも、扉の向こうで誰かが手招きしているような気がして、恐る恐る入ったの。そうしたら、また同じ声が、今度は私の名を呼んだわ。ミクラ・ヌンディーネ――その名に我が名を持つ娘よ――って」
「ヌン、なのね――」
 ミクラさんの頷くような間があった。
「ええ。それでね、いつもありがとうって言われたの。どうしてお礼なんかって思ったけれども、いつでもここにおいで――この部屋で、またミクラの話を聞かせておくれって言われて、思わず大泣きしてしまったのを良く覚えてる。帰りが遅くなって、しかも瞼を泣き腫らしていたから、保護官に酷く心配をかけたわ。何があったか聞かれたけれど、今思えばどうしてだろう――いいえ、きっと独占したい気持ちだったのね。私、頑なに答えなかった。その日の出来事と、そして、その日から始まった私とヌン様の交流は、今この瞬間まで私だけの秘密にしていたのよ。話したのはニナ、貴女が初めて……」
 また、しばしの間――。
「私ね、本当に父を手に入れたような心地だった。ヌン様は私のどんな他愛も無い話にも耳を傾けて下さったし、悩みも聞いてくれた、喜びも分かち合ってくれた――たまに、怒られたりもしたわ。それは他に替えようのない、温かさだった……」
「………」
「私が大きくなるにつれて、その時間は少しずつ減っていったし、先代の引退と同時に巫女になることを命じられてからは、厳格な祈りの時間に取って代わられてしまったけれど――それでも時々、ヌン様は私個人に宛てて言葉を下さることもあったし、本当にごく希に、また昔のように話をしたいとおっしゃられることもあった。私もずっとそんな時間を、心待ちにしていたから、とても嬉しかった。でも――」
 少し、長く間が開いた。
「ニナ……私の父は――」
 言葉が、戦慄く唇の内で揺れている。
「私の父は――変わってしまわれたのね……もうあの頃の、身近に感じた父ではなくなってしまった……嗚呼――」

 どうして――

 どうして神様って、こんなに遠くにいるのかしら――

 流れる無音の間に、僕は涙の音を聴いた気がする。
 嗚呼、彼女が極限までヌンを信じつづけたわけだ――彼女にとって、この都市の神は誰よりも特別な存在だったのだ。
 部屋から零れ始めた嗚咽に、僕の視界も歪み始めて――秀喜も、じっと足元を見つめていた。
 まるで大きな穴の縁に立って、闇色に隠された底を想い続けるような時間が流れている。でも――
 その穴に最も近い場所に居るニナが、大きく空を仰ぐ。悲しみはありのままに――それでも、確かに、未来を想って。
「ねぇミクラ……私もね、深く絶望しながら生きていた時間があったわ。とても辛くて、長くて悲しい時間だった……。人身売買の商品にされかかった時には、もうこの人生はどうしようも無い、そう思って全てを諦めかけた……。でもね、本当に終わりそうになった時、私、どうしてかしらね――必死で抵抗したの。悔しくって、悲しくって、こんな結末で人生を終えるのは嫌だって、無我夢中だったわ。そうしたらね――」
 僕と秀喜の脳裏に蘇る、過去の旅のワンシーン。
 初めてニナと出会った時、彼女は自我を破壊するソフトをインストールされようとしていた。そうだ、ハッキリと覚えている――体のどこが壊れようとも、絶対に勝ち目の無い状況だとしても、彼女は全力で抗っていた。自分の人生を、決して諦めていなかった。
「――出会ったの。とても変な人達に。遠い異世界からやって来た、今ではとても大切な人達に。諦めていたら、きっと出会わなかったわ。だからミクラ、これからミクラにも、そういう出会いがきっとある。貴女が貴女でいることを捨てない限り、また貴女にも、新しい大切なモノができるはずよ。大丈夫……私達はずっと貴女の味方だから。これはね、ミクラ、神様と同じくらい信じていいの」
 ニナの声は密やかに語るようでいながらも、芯のある力強さを感じさせた。僕にはあのニナが、満面の笑みを浮かべたようにも思えた。
「ミクラ、全てが一段落したら、貴女には私達と一緒に旅をすることだって選べるのよ――」
 ニナはそう言って、言葉を結んだ。

                       ≪――続く≫
前話→30.新たな考察    次話→(4月18日更新予定)


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Posted on 2018/04/11 Wed. 22:17 [edit]

category: 小説:移動城塞都市と涙の運河

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小説:移動城塞都市と涙の運河 『30.新たな考察』  

     30.新たな考察――

 激しく泣き続けた後で、ミクラさんは気を失ってしまった。
 僕達は彼女を家まで運び、傷の応急処置をした後で寝室のベッドに横たえさせた。僕は彼女がハッキリとした意識で目覚めるかどうか心配でならず、片時もその場を動きたくない気持ちだったが、そこはミクラさんの寝室ゆえ――僕と秀喜はニナによって、あっさりと部屋から押し出されてしまった。
「女の部屋よ、勝手に入り浸るのは駄目。私が見ているから、二人は夕食の準備。ミクラ用にお粥も頼むわ」
 パタン、と閉じられた扉の素っ気なさに、僕は暫し立ち尽くした。けれど、ニナが珍しく料理を命じたのは、居ても立ってもいられないだろう僕の気持ちを落ち着かせる為でもあると理解できたので(あと、秀喜が盛大に腹の音を鳴らしたので)、ここは潔く従うことにし、キッチンに向かった。
 キッチンにある食材を勝手に漁るのは気が引けたが、しかしひょっとしたら、今僕達がミクラさんにしてあげられるのはニナのように傍にいてあげること、そして食事を作ってあげることくらいが精一杯じゃないだろうか? ならばと思えば、自然と気合が入る。僕は見繕った野菜と包丁を秀喜に投げた。
「コレ、皮剥いて」
「はいよ」
 秀喜は曲芸じみた手つきで包丁をキャッチし、するするとジャガイモっぽい野菜の皮を剥き始める。料理に関する知識は乏しい彼だが、こと作業的な事柄となると、とにかく器用だ。逆に僕は料理を知っているのに、刃物を使うのは苦手である。普段料理は両方をそつなく熟せるニナに任せっきりだが、まぁ久し振りでも二人掛かりなら作れないこともない。調味料はニナがハイエースの備蓄から持ち込んでいたのでそれを使い、もし可能ならミクラさんにも僕達の味を体験してもらおうと思った。
 作るのは醤油、酒、みりん、砂糖を使った魚と野菜の単純な煮込み料理(それとお粥)――気合を入れて下拵えしたは良いモノの、煮込み始めると手持無沙汰になった。集中力が途切れ、またミクラさんの苦しみを想って落ち着かない気分になる。
 と、そこで気になったのがダイニングテーブルで腕組みをしている秀喜の様子だった。何かを深く考え込んでいるらしく、しかも彼には似つかわしくない、真剣そのものの表情を浮かべていた。
「秀喜、どうしたんだ?」
「……いや、う~ん、何つーかさ……」
 言葉も歯切れ悪かった。どちらかと言えば思考よりも体を使うことが本分の彼だから、考えれば考えるほど、適切な表現が見つからなくなっているのだろう。
 しばらく言葉を待っていると、彼はこう言った。
 結局さ、俺達は何をすればいいだ? と――。
「いやさ、最初はこう思ってたんだよ。悪い敵が現れたから、その正体を突き止めて、やっつけて、この都市の平和に貢献してやろうって。そうしてらみんな喜ぶだろ? 冒険のし甲斐もあるってもんさ。でもよぅ祐介、お前の仮説が当たっているとしたら、その敵はヌンなんだよな? ヌンはこの都市の大事な神様で、ミクラのような人達はヌンを必要としている。ただ打ち倒すってんじゃ解決にならない。しかも、ヌンは砂漠を緑いっぱいの地に変えようとしてるんだとしたら、それって――」
 彼の言う「何をしたらいい――」その意をぼんやりと察して、僕は頷いた。
「そうだな……この砂漠が熱帯雨林になるのだとすれば、それは良いことだと思うよ。例えば僕達が最初に訪れた赤レンガの都市――ああいう食料自給率の低い都市は、最もその恩恵に与るだろう。自然から食物を得られる機会が増えるし、動物の個体数が増えれば狩りもできる。ひょっとしたら、やがては農耕文化も芽生えるかもしれない。世界にとって大きなプラスだ」
 僕がそう言うと、秀喜は自分の思考も的外れではないと安心したのか、うんうん頷いて、やっぱり、だよな――と一人ごちた。
「俺さぁ、ヌンにはそれ、是非やって欲しいわけよ。その上で、この都市の人達も洗い流されることなく、今までどおり生きてもらいたい。神が必要なら、ヌンにもまた神様やってもらわなきゃ。でもさぁ、じゃあ何をすれば良いんだ? ヌンを説得して、やり方を変えて下さいってお願いでもするか? 神様にお願い? まるでお祈りだな。ミクラでも駄目なのに、通用する気がしねぇや。いや、待て待て、そもそも、ヌンって本当に神様なのか? 神であったとして、いや、そうでなかったそしても……この都市を洗い流すことに意味を感じないんだよな。他にもミクラがノアに選ばれた理由とか、分からないことが多くてヌンの正体がどんどん遠くなっちまう感じだ。こんなんじゃ、余計にやるべき事が見えてこねぇよ。この都市が熱帯雨林を移動できるのかも心配だし……あ、やっべ、また頭こんがらがって来た……わりぃ、これ以上は上手く説明できねぇ」
 秀喜は両手で盛大に頭を掻きながら謝った。が、僕としてはちょっと吃驚していた。彼が仮説を肯定した時に出てくる疑問点を、これ程羅列するだなんて思ってもみなかったから。
 彼としては、結局何を成すべきかという最大の一点が不明瞭なのは気持ちが悪いのだろう。それがなぜこうも不明瞭なのか、と――これは、彼なりに考えた成果なのだと思った。
「確かに秀喜、君の言うとおりだ。最良の結果は、この都市で生き残っている人々を皆生かしたまま、大地の復活を見ることだと思う。でも、ヌンに神であり続けようという意志は無いと思うよ。食料の栽培には向かないはずの赤レンガの都市の食物庫に、不思議な種があったんだ。おそらく、ヌンはやがて農耕文化の広がることを見越しているんだろう。そうなれば貿易に対する重要度は下がるんだから、貿易の神もお役御免だ。それに己を無くそうとしているくらいだから、大地が蘇れば砂漠に適したキメラもいなくなり、貿易も人々の手に還すつもりなんだと思う――ん、待てよ――」
 話しながら、思い付いたことがあった。それは仮説に加えるべき新たな言葉達と、大きな違和感だ。
「そうか……洗い流すべき理由、一つだけ思い当たった」
「なんだ? どんな理由だ?」
 少しでも気持ちをスッキリさせたい秀喜は、テーブルに身を乗り出して興味津々だ。普段からこれくらい思考的だともっと助かるのに、と頭の片隅で思った。
「ヌンの科学力は他の都市と比べて明らかにオーバースペックだ。いや、オーパーツと言ってもいい。そのヌンが跡形も無く消滅すれば、時代は停滞する」
「時代が停滞?」
 僕の言葉に秀喜は首を傾げた。停滞と云う言葉に前向きな理由を感じなかったのだろう。しかしそれこそが、ヌンが一心に目指した世界の姿なのかもしれないと僕は感じていた。
「世界を人々に委ねれば、やがては科学だって普及していくはずさ。その時に、動くことを止めたヌンというオーパーツの存在が、それを加速させてしまう可能性は十分にある。こんな巨大な都市だから、貿易を還せば、いずれは誰かに発見され研究材料にされてしまうに違いない。嗚呼、そうか……武器の製造に厳しい教えを作ったのも、これが理由かもしれない。軍事研究は、やはり科学を爆発的に躍進させる恐れがある――」
「おい、なに独り言みたいに喋ってるんだよ」
 僕は自分の思考に没頭し始めていた。
「なぜ科学都市が科学を恐れているんだ? 過去に何かがあった? 何が――いや、それこそノアの大洪水の正体と考えられないか……地下の動物達は熱帯雨林を生きていたらしい絶滅種だし、砂漠になる前は豊かだったと考えるほうが自然だ……それを元に戻し、次は科学進化の停滞した世代へ世界を渡す――ならばヌンは、前世代を知る何か……過去の遺物……」
「お~い……祐介ぇ……」
 考えれば考えるほど、違和感が膨らんでいった。ヌンは決して人間を否定せず、あくまでこの都市は次世代の土台と考えているのだと思ったのだ。だから消そうとしている。そして次世代とはつまり、この都市以外の地に住まう人々のこと――ヌンは彼等の為に、全てを整えつつある。ならなぜ――

 ミクラさんを、ノアに選んだのだ?

 僕はミクラさんが悪魔に殺されない理由として、彼女がノアなのだと思った。ある種のこじ付けだったが、生かされていることは事実なので仮説に含んだ。でも――

 この仮説が正しいなら、彼女だけが残される理由は、無い。

 何一つ無い。

 科学を発展させるオーパーツは、何もこの都市だけではないだろう。この都市に住んでいる人々の頭の中に、それは知識としても存在するではないか。
 ヌンの目的に従うなら、この都市の民は誰一人生かしておくべきではないのである。
 これは、一体――。

 煮立った鍋がゴトゴト音を立てて、泡を吹き溢した。

                             ≪――続く≫
前話→29.巫女の聖堂    次話→31.彼女の父親


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Posted on 2018/04/04 Wed. 20:14 [edit]

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